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生徒会きっての愉快犯、双子補佐の橘兄弟を一目見ようと、廊下にはいつの間にやら通路を塞ぐほどの人だかり。
「双子様ぎゃんかわ!」
「橘兄弟に気安く触るな、穢らわしい!」
「ルイに馴れ馴れしくしやがって……」
しきりに飛び交う野太い歓声と、王道への罵声。また、周囲のロリコン共ほど主張は大きくないが、双子に対する敵意もゼロではない。この一週間で湧いた王道信者たちだ。
そんな周囲に囲まれていながら、何事もなく会話を続ける三人の異様さ。
六限目がはじまるチャイムが鳴っても、この集団はここから一向に動く気配を見せない。近くを教師が通ろうと、見て見ぬふりで通りすぎていく。家柄で力関係が決まるここでは、年功序列などありはしない。
ここまでの騒ぎとなると他の意味で放っておけない。
風紀を呼ぶ事態にだけはさせちゃならん。今の生徒会の現状を、あの委員長に突っつかれたら終わりだ。事が大きくなる前に、生徒会から出た錆は同じ生徒会である俺が取り除かねば。
よし、善は急げ……!
「あれー? リオちゃんだ。どしたのそんなとこに隠れて」
「おっふ」
み、見つかったーーー……!
いや、結果的には見つかってよかったんだけどせめて自分のタイミングで行きたかったーー!
「あ、ほんとだ! りっちゃん!」
「マツ遅いよー」
「二人が速いんでしょ」
「リオ、マツリ!」
見つかってしまったので、すごすごと物影から姿を現す。
さらに生徒会役員二人が出現したことで増す一方の生徒の黄色い声。せりあがった溜息を意識的に飲み下す。
勝手に両サイドに避けるギャラリーの間を突っ切り、騒ぎの元凶のもとへ近付く。ざわ……ざわ……と囁きあう声には一旦耳を塞ぐとしよう。俺と反対側の廊下からマツリもこちらへ近づいてくる。
双子と一緒に王道とランチタイムを楽しんでたくせに、随分と遅い登場じゃないか。
マツリににっこり笑いかけられても、社交辞令を返せる気分じゃない。敢えて無視すると、マツリがひとつ瞬きを挟んで、それから苦笑する。
……解ってる 顔だな、ソレは。
「あれ、機嫌悪いんだ」
「随分と、仲良くしてたみたいじゃないですか」
「だってリオちゃんが言ったんでしょう。ルイちゃんのこと、『悪い子ではないですよ』、って」
「……」
「なあ、二人でなにコソコソしてんだ?」
そして当然のように会話に割り込んでくる王道。
俺とマツリを呼び捨てにしたあたりから周囲の非難の声がすごいんだけど、この近距離でもガン無視ときたか。逆にすげえや。
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