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「ただの世間話だよ、ルイちゃん。それとももしかして、妬いてるの?」 「……妬いてるってなんだよ? それよりもリオ、今から暇か!?」 「暇じゃないでしょ? リオちゃんは」  王道と話しながら、俺と王道の一直線上にマツリが体半分をさりげなく滑らせる。  まるで背中で俺を牽制しているようだ。  そうまでして王道の意識を自分に惹き付けたいか。  だがこちらとしては、お前という障害のおかげで王道とマンツーマンで話さずに済むのでまったくもって痛手じゃない。  そんなに警戒しなくたって、誰が好き好んで王道の誘いになんか乗るかよ。そもそも、こっちが暇じゃないのは誰たちのせいだと思ってんだ。  有言実行。  灸を据えてやる。 「そうですね、時期が時期だから仕方ないのはわかっていますが……すみません、ルイ。最近はとても忙しくて。───ですよね。マツリ、ソラ、ウミ」 「「「…………」」」  作り笑いで完璧に覆い隠すその下に、静かな怒りを流し込む。  双子は同時にバツが悪そうに目を逸らし、背中しか見えないマツリも僅かに肩を強張らせた。  まわりの生徒は『この時期』というワードを拾って、忙しい理由が新歓のことだと勝手に解釈してくれる。"生徒会業務そのもの"が滞っているのだと、勘づけるほどの情報は与えてやらない。  もしも生徒間に真実が広まってしまったら、踏ん張ってくれたタツキの努力が無駄になる。  だがここで、責められている側に罪悪感がひと欠片でも残っているのなら───、不真面目に過ごしていた自分たちが、あたかも真面目に業務に参加していたかのように同意を求められたら、言葉に詰まることだろう。  そう、まさに今の三人のように。 「忙しいのか……でも! あんまり無理はするなよ? 今日くらいは息抜きしたって……」 「ええ、彼らはあなたのおかげで、この一週間ほど十分"息抜き"ができたみたいです。ルイ、ありがとうございました」 「え、あ、お礼を言われるほどでは……」 「三人も、もう"息抜き"は済みましたよね?」  分厚いレンズを頻りに弄りながら謙遜する王道には副会長スマイルを送り、一方の役員には毒仕込みの棘を刺す。  こくこくこく、と双子が首ふり人形のように肯定を示した。  これでも、生徒会の人間に対しては結構怒っている。  王道を口説く分にはまだいい。王道に片想い中、ということになってる俺だって、人のことは言えない。  だが、その影響に伴い周りにかけられる負担を無視してまで、自己の恋路に無我夢中なんて目も当てられない。こいつらがサボっている間も黙々と仕事を肩代わりしてくれるタツキほど、俺は聖人なんかじゃない。  生徒はまだ、生徒会の機能が下がっていることにハッキリとは気づいていない。通常運転に見えるようにと、タツキも俺も努力しているから。  しかし勘がいい人間は、会長の不在と、会計・補佐が一人の生徒に構っている現状を見て不安を覚えるだろう。  ここでもし新歓が中止になったり、タツキが疲労で倒れでもしたら、生徒の漠然とした不安は一気に不信感に変わる。  生徒会の任期は一年。しかしそれに胡座を掻いていれば、リコールされるのが関の山だ。  

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