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 その疑惑を払拭するためにも、こいつら三人には、一週間サボった分きっちり一週間死ぬ気で働いてもらうこととしよう。目には目を、歯には歯を、100の仕事には100の仕事を。  代わりにタツキには休んでもらって、溜まりに溜まっていた通常業務をこいつらに片付けされる。  一週間もあれば生徒会の機能も回復するはず。  あとは会長……つうか会長さえいたら、タツキがあそこまで気を張る必要もなかったってのに。二人は初等部からの旧友って話なんだから、ちったあフォローしろよフォローを。 「マツリ、ソラ、ウミ。きっとタツキも待っていますよ。伝えるべきことは、わかっていますよね???」 「「「ス、ミマセン……」」」 「ふふ、私に謝ってどうするんですかァ」  俺に詫びを入れるってんなら高級茶菓子と紅茶のセットのひとつやふたつでも贈呈しろってんだ。  まあわんこは俺と違って正真正銘のぐう聖なので、戻ってきてくれただけで喜ぶんだろうけどなあ……器が広いナア……。  といってもこれで性格まで改正するもんならこれまでこんなに苦労してない。マツリは根がサボリ魔だし、双子は出会った当初から愉快犯だったし。  ただ、釘は刺した。もしも繰り返すようなら、こちらだって愛想を尽かすまでだ。  残念だとは思うが、別に俺は、生徒会(こいつら)と『なかよしこよし』をしてるわけじゃない。 「……さて、解散。鬼が来る前に解散しましょう」 「待てってリオ! お前は? お前は休めてないんだろ!」  せっかく終局しようとしてるのに、空気の読めない横槍が入る。  そりゃあ休めてないけど、新歓の準備があるのに俺が休んでどうするよ。しかもお前と息抜きしろって言いたいんだろ? やだよ。ぜったいやだ。  そんなことより、今最も警戒すべきは鬼、もとい風紀の存在だ。  特にここ最近は王道のせいで秩序が乱れまくってて、何かとピリピリしているらしい。  現在すでに授業中で、ギャラリーに囲まれたままのこの状況。  風紀に見つかって文句をつけられてそのまま風紀委員室に……なんてことになったら俺の胃に穴が空いてしまう。そしてきっと墓穴を南アメリカまで掘ってしまう。 「心配してくださるのは嬉しいのですが……休息なんて今はどうでもいいのです。それよりも、もう授業は始まっているでしょう。一般生徒は速やかに教室へ。マツリたちも、風紀の人間が騒ぎを聞き付けてここに来る前に仕事場へ向かって下さい。……そうですね、念のために口裏でも合わ」 「───つれないな。そんなに俺と会うのが嫌、か」 「 、っえ……?」  腹部に何者かの片腕が回ったかと思うと、そのままグイッと後ろに引かれて、自分でも驚くほど簡単に体を持っていかれた。  この、艶を孕んだ美声。  語尾で掠れる甘い癖。  耳元で、後ろからその声を吹き込まれた、その瞬間。 「こんなところで一体何をしている。副会長様……?」  ………めげそうになった。  

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