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「あれの処理は俺がやる。こっちでカタをつけるからお前は終わるまで引っ込んでろ」
「え、どういう心境の劇的ビフォーアフター?」
「さっき、気づかれた。お前とここにいるの」
「誰に? もしや会長と揉めてる有象無象たち?」
「ああ」
「……まさかお前、あいつらに因縁をつけられた経験とかない?」
「だから処理してくるっつってんだろ」
「あるんかーーい」
ここだけの話、紘野は傘下ができるような大きな族の幹部に所属しているらしく、喧嘩もものっっすごく強い。だからこの学園にいる不良非行少年たちにとって、紘野は目の上のたんこぶというわけだ。
何を勘違いしたのか、去年は俺と紘野がソウイウ仲だと勘繰った生徒が俺を紘野の弱味だと断定してアホらしい絡み方をされたことが何度かある。
俺を隠してやり過ごそうとしてくれたのも、言われなき疑いをかけられたあの時の面倒くささを経験済みだからだろう。
もしかしなくても、疲れた俺を労って面倒ごとから遠ざけてくれているのだろうか。なんてデキたともだち……!!
「全部潰してくる」
「結局暴れたいだけかよ」
まあそんなこったろうと思ってた。
潰すにしても会長以外にしておけよ、と念押しして、立ち上がる紘野をあぐらの体勢で見上げれば、無表情ながらにも飢えた獣のように目を底光りさせる横顔。
時々見え隠れする好戦的な一面。
止めても聞いてもらえないことは重々承知しているつもり。
せめて、怪我だけはしないようにと祈っておきますよ。手当ては俺の役目なんだから。
ふいに見下ろされた瞬間思わずビクついてしまいそうになった俺の矮小な心臓のことは内緒にしておこう。不良にはあまり堪え性がないのだ、これでも。
「寝るなよ」
「お前さっきは寝たけりゃ寝ろって言わなかったっけ」
「自分の寝起きがどれだけ最悪なのか自覚してからにしろ」
「え、まって詳しく」
その事実は約17年自分の身体と連れ添ってきて初めて知った。
ルームメイト時代はまあ、ちょっとしたハプニングと申しますか、不可抗力の偶然の産物で同じベッドで寝たこともままに、ままにはあったけれどそんな素振りこれまで全然見せてこなかったじゃねえか。
寝起きだからこそ記憶も曖昧なんだろうが、例えば寝相悪くて暴れ出したり頭突きしたり歯軋りしたり急に寝言いったりしてたら最悪なんだが。
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