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詳しく教えてとせがんでも紘野くんは無視を決め込むので結局真相は闇の中。
まあでもベッドから落ちた経験はないし、最悪屋上から落ちるような寝起きの悪さではないと思いたい。でも眠気は吹き飛んだ。
「ああ、それと。手違いであの会長まで巻き込んだときはそっちでフォローしておけよ」
「わかった、ってオイ。巻き込むなよ。ほんとお前巻き込むなよ?」
なんで最初から巻き込む想定をしてるんだろうこの人は。もしかすると紘野も紘野でストレスがたまっている?
そういえば昨日は色々あって俺の代わりに王道に絡まれていたみたいだし(不可抗力)……もしかしなくても0.00001ミリくらい俺のせい……?
いや、でもあれは決して故意じゃなかったんだけどこいつは絶対信じないから言わないがな。
ちなみに紘野と王道の初接触は、昨日の昼まで遡る。
昨日の昼休み、寮に帰ってサボろうとしていた紘野を俺は偶然見つけて捕まえ、校舎内の各所に設けられた簡易喫茶店(カフェテリア)に誘った。
しかしその移動中、ばったり王道とその愉快な仲間たちに遭遇。そういえば食堂イベントで見た二人のほかに、赤髪ツーブロックの一匹狼っぽい生徒も王道の取り巻きに加わっていたのだがそこは割愛し、当然のように俺たちに近づいてきた王道に俺はいつもの笑顔で対応した。
『リオ、今から昼ごはんか? ……ソイツ誰だ?』
『紘野は私の友人ですよ。……ですよね?』
『……』
『おいお前、無視はよくないぞ』
『ほんとその通りですよ、ルイ、もっと言ってあげてください』
『ヒロノ、ちゃんと返事してやれよ、リオがかわいそうだろ!』
『そうですよ、午後の授業も大人しく一緒に受けましょうよ』
『そうだぞ、授業はまじめにっ、あっ、どこ行くんだヒロノ!!』
断じて悪ノリとかではなく、見ず知らずの一年坊主に注意される紘野が面白かったとかでもなく、無視が癖になっている紘野を改正させようと、純粋な気持ちで、ひと欠片の邪心もなく、そうだそうだ、と王道を支援しただけなんだ、本当に。
そしたらあら不思議、面倒になって引き返した紘野の後を王道は追いかけていったではないか。
ほんと無視はよくないぞ紘野くん、こういうことになるから。
まあ昨日の出来事を簡潔にまとめると、王道に遭遇した際、結果的に紘野を差し出すかたちで難を逃れただけだ。
王道に話しかけられてもひたすら無視を貫いた紘野だが、王道がめげないのでさすがに辟易としたらしい。
しかもこれが重大なんだが、周りの生徒はそのシカトが「許容している」とうつったらしく、すっかり紘野も王道を気に入っている一人と見なされている。
これは紘野の元々の性格と面倒くさがりが災いしたので、日頃の習慣のせい、つまりは紘野の自業自得の結果だと思うのだが、「偽りの王道親衛仲間」が増えたので俺としてはたいへん嬉しいですね。
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