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コツ、とウッドデッキの床を踏み鳴らす音がきこえて慌てて顔を上げると、すでに紘野は屋上の出口へと歩を進めていた。どうやら行くらしい。
「15分もあれば片付く」
「おー。すまねえな」
素直に謝ったら気色悪そうな顔された。どいひ。
屋上から出ていく背を見送って、言われたとおりきっちり施錠する。
まあ、行動理由の多くが気まぐれみたいなやつだけど……鍵をくれたのも、代わりに面倒を請け負ってくれたのも、めんどくさいと言いながらも愚痴を聞いてくれたのも、あいつなりに気を回してくれた、のかも、しれないし。たぶん。
そこはしっかり感謝するとしよう。
だが、あいつに気を遣わせるほど疲労が表面化していたとしたらそこは俺の落ち度だ。
今年受験生であるタツキの負担の比ではないが、ちょっと仕事を詰めすぎていた自覚はあるので、そのあたりはきっちり自己管理せねば。
周りが自由人多いと自分は余計まじめに働いてしまうタイプだとわかったことだし。
生徒会入りを果たしたのが去年の12月末。まだ半年未満と未熟だが、たぶん順当にいけば学年が上がっても俺は生徒会に居続ける可能性が高いので、適度にリフレッシュする習慣を身に付けておかなければ。
青い空を見上げる。
天気予報では、ここ一週間はずっと晴れが続くと行っていた。
連日の鬱々とした日常では気づけなかった、遠出にはもってこいの空模様。
「……そうだ、遊園地に行こう」
ひらめきが突如舞い降りる。
新入生歓迎祭は、生徒の鬱屈を一掃させる楽しい娯楽施設が一番いい。
園内・ホテルは貸切にして、費用や手配その他は検討しつつ、どうすれば親衛隊の制裁計画と王道とのデート()を阻止できるか対策を練る。
細かい計画に関しては、協力してくれると言ってくれた先輩の意見を仰ごう。
さて、バ会長のせいで仕事もできたところだ。
会長とどこぞの不良達の喧嘩を止めるなんて過労はごめんだが、会長ひとりのフォローならお安い御用。
きっかり15分を目処に、俺は静かな屋上でのびのびと過ごしたのだった。
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