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歓迎することが務めです 1

「はぅぅ……終わんないよおお……」 「なんでこれ順番に並んでないの……」 「二人がサボってたからでしょ……」 「「マツにいわれたくなーい……」」 「口を動かす暇があるなら、」 「「「ごめんなさーい」」」  王道襲来から一週間と数日が経過したある月曜日。王道事変が起こって以来はじめて、現在生徒会室には役員フルメンバーが集結していた。  終わりが見えない書類整理に忙殺される双子、パソコン用のメガネをかけて難しそうにディスプレイと向き合うマツリ、そして会長はといえば重要書類にパラパラと目を通しては判を押している。  一週間溜まりに溜まった通常業務、彼らがいかに優秀だろうと朝飯前とは行くまい。 「ね……おれ、てつだ、」 「「タッキーは休んでて」」 「オレらのことはいーから」 「必要ない」 「結構です」 「……ぅぅん」  そして彼らとは対照的に、自ら手伝いを申し出たにも関わらず全員に総拒否されるのはタツキ。  L字型の高級カウチソファーへすごすご帰っていき、大きな体を小さくしながらちびちびココアを飲んでいる。  勿論サボっているわけではない。タツキには先日『一週間仕事禁止令』を出したのだ。  本来なら授業に出てくれていいのだが、他の皆が働いているなか自分だけのんびりするのは申し訳ない……とのことで生徒会室に顔を出してくれている。ぐう聖。  「りおもやすむ側……」と何度かソファーへ連れ去られそうになったが、俺はまた別口から入った仕事がラストスパートなのだ。休む暇もない。  おっと。言ってる傍から。 「……失礼、少し抜けますね」  充電器に立てた携帯がチカチカと点滅し、続いてディスプレイにメール受信のお知らせ。  メッセージを確認し、携帯をポケットに捩じ込んで席を立つ。  「いってらっしゃい」、と律儀に応えるマツリも、ほかのメンバーも特に理由を問われることなく俺を送り出したので、これ幸いにと三階・生徒会専用のプライベートルームへ急いだ。  早く連絡しないと。  待たせるわけにはいかない。 「…………嬉しそうだな……」    誰かがぽつんと、誰にも気づかれずに呟いた言葉を、俺は当然知る由もない。    

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