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歓迎祭は俺がイチから作り直したこともあり、企画を通すのはなかなか骨が折れた。
意外なことに、今回俺の立案である『遊園地貸し切り』は実は初めての試みだったらしい。
歓迎祭は今週土曜、一泊二日。
先輩・後輩の組み合わせになるよう二人一組のペアとなり、人気遊園施設を貸しきっての自由行動。
さすが金持ち学園とあって必要経費に問題はなかったが、やはり急に貸し切りで一泊と言われて二つ返事で了承とはいかず、結局は委員長の後押しのおかげで施設側や関係各所から納得が得られたようなものだ。
そうでなければ、例え副会長の肩書きがあろうと、たかだか一般庶民の立案が簡単に通ることはまず無い。
そして委員長の一声により、風紀委員を始め行事を盛り上げる広報委員や部活動などからの協力も得られている。
食堂イベントのことで生徒が荒れる原因を作った生徒会の主導では、ここまで首尾良くとはいかなかったに違いない。
すべては委員長の人望ありきだ。
「……───では、細かい問題は微調整で済みそうですね」
『だな。だが、経費については細分化して綾瀬にも把握させる必要がある。頃合いで話を通しておけよ。お前のことだから、他のメンバーにもまだ、ろくに企画の詳細を明かしていないだろう?』
「……仰る通りです。伝えておきます」
ば、バレている。
恐らく、『うーん通常業務もそろそろ目処がたつしほかの役員には今日報告しようかなあぽやぽや……』という俺のふわっとした思考までも読んでいる。
そもそも新歓の行き先は、生徒会を含めた全校生徒にはまだ広まっていないシークレット情報だ。
志紀本先輩が「この件は内密に」とイケヴォで仰るんだから従うしかあるめェよ。
『とりあえず……何とか間に合いそうで良かったな』
「はい、委員長のおかげで何とか。本当に、ご協力ありがとうございました……」
俺自身、生徒会に入ってまだ四ヶ月少しとあって、初めての大きな行事で段取りがわからないことばかりで。
だから、志紀本先輩の力添えは本当にありがたかった。
これらすべてを風紀の仕事と平行しながら片付けてくれたのだから、先輩には頭が上がらない。
おおまかな確認は終了。
手短に話は済ませたつもりだったが、それでも現時点で10分を軽くオーバーしている。先輩の時間を10分も割いてしまったことが申し訳ない。
最近、某王道周辺のせいで、風紀も忙しいらしいので。
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