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この一週間で何度起きたかわからない王道事変の最近のビッグニュースは一昨日土曜日。
曰く────『役職持ち』の一人が王道に盛大にコクって、そして盛大にフラれた、と。
『役職持ち』には高確率で親衛隊組織が付いており、影響力も桁違い。
かの『役職持ち』の親衛隊は勿論、他の親衛隊やファンクラブも"いつ自分らも同じ境遇になるか"と懸念して戦々恐々としているそうなのだ。
食堂イベントの比ではないが、親衛隊同士の結託など不穏な話も耳に届いている(リウ情報)ので、最近の風紀は輪をかけてご多忙らしい。
いつもなら月の中頃には生徒会や各委員会を召集した『月城学園定例会議』略して『月例 会議』が予定されているのだが、それを来月に見送るくらいには、今月は多くの組織が仕事に追われている状況にある。
『さて、全体的な打ち合わせはここまでとして。今度は的を絞った対策に移ろうか』
「……的?」
『今回一番の山は、あの一年が歓迎祭中、極力問題の火種にならないようどう手を回すかだろう?』
「風紀の方が施設内を見回って下さるとのことでしたよね?」
『ああ。だがその前に、大元の火種が火そのものから遠ざかる環境を事前に作っておく必要がある』
火種(=王道)が火そのものから遠ざかる……?
一体なんの謎掛けだ、と少し悩んで、すぐにピンときた。
遊園施設での自由時間とホテルの部屋は基本的にペアで、振り分け方は籤引きだ。
もしこのタイミングで生徒会の人間などが王道とペアになろうものなら、強火も強火、新歓中に親衛隊が強硬手段に出る可能性が飛躍的にあがるだろう。
場合によっては……一年の王道と二年の俺がペアになる可能性も、ゼロじゃないわけで……。
「でも、籤引きはもう運任せとしか……」
『案ずるな。ペア割は広報委員が大々的に発表する予定だから、公開前に裏でそれとなく弄らせてもらう』
「え、要は不正じゃないですか。風紀がそれやったら駄目でしょう」
『適当に御託を並べて融通を効かせるさ。好都合なことに、あの一年の特異性は他学年にも広まっているからな。口実はいくらでも出来る』
「……そ、うですね。あなたなら融通どころか尻尾を振って従う方も多いでしょうし」
『ヒドい言い草だな、まったく』
ハッ、と鼻で笑い飛ばす気配。
一見傲慢にきこえるそれも、事実として本当に尻尾を振って傅く人間が先輩のまわりにはたくさんいるので、なんの皮肉も言い返せなくて困る。
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