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 調子が狂いそうになる。いつものペースを呆気なく見失ってしまう。  志紀本先輩と、話していると。  俺がついこの間から始めた「王道惚れてる設定」を見抜いただけに飽きたらず、短い間ながら身に付けた「副会長としての立ち振舞い」まで、あっさり崩されてしまいそうで。  去年懇意にしていた頃は、先輩とはただの先輩後輩の関係を築いていたから、その頃に調子を戻されていく、というか。  その延長で、困ったことがあればすぐあの人を頼ってしまいそうになる。  不味い傾向だと思う。  今となっては俺は生徒会の人間で、あの人は風紀委員長。協力関係はあれど違う組織。頼りきりではいられない。  だというのに、あの先輩のからかい癖ときたら……。 「……と、こうしてる暇はねえな」  部屋の前のベルが鳴らされ、すぐさま立ち上がる。無意識に施錠していた自室の扉を押し開けると、そこに待っていたのは。 「はい、……と、……ウミ」 「りっちゃん電話終わったー? かいちょーが皆に話あるってー」  目線を下に落とすと、水色頭の癖っ毛をひょこひょこ揺らす橘兄弟の片割れ。ウミ、の方だ。  ソラと並んで見比べない状態だと、どっちなのか途端に判別が難しくなる。  しかしそこはもう慣れだ。容姿ではなく、人と接するときの雰囲気で見極める。  ウミは俺と喋るとき、こう、擬音をつけるとするなら……「ひょこひょこ」。ソラはにこにこしているがひょこひょこじゃない。  で、会長が相手だと逆だ。  今みたいに離れた場所にいるときは自然とウミが俺を呼びに来ることが多いから、まあ……ちょっとは懐かれてんのかな、という印象。  これがマツリ相手だと二人とも「ひょこっ、ひょこっ」となる。三人は面倒見のいい兄とやんちゃ双子の弟みたいな悪友感があって、より近しい印象。  タツキ相手だともっとテンションが高くて「ぴょんぴょん」してる。構ってもらいたいときが特にそうなる。  ……ふざけているわけではない。つまりはフィーリングだ。感覚でわかる、としか言えない。  急かす片割れの後に続く。  戻ってきてみると、休憩中なのかだいぶ砕けた雰囲気が広がっていた。 「ほら、俺の言う通りだったろ。15分はオーバーするって」 「うーわ、会長に負けたー」 「アイスコーヒーな」 「ボクはタピオカ抹茶ラテなきぶんーー」 「あ、ソラずるーい! ボクも便乗!」 「……ここあおかわり」 「はいはい。リオちゃんはどうする? ついでだし好きなのオーダーしてってよ」 「……では、アイスティーを」  こちらを見て「何分で帰ってくるか賭けてたんだよ!」と笑うウミ。お前ら暇か。仲良しか。  

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