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 空は快晴。  日差しの強さがやや気になるものの、絶好の新歓日和だった。  生徒会専用バスに乗り換え、遊園施設の入場ゲート前広場に降り立つと、先に整列していた生徒に華々しく迎えられる。  何故レッドカーペットや紙吹雪が必要なんだ、という至極当然の突っ込みは誰の耳にも届くことなく掻き消された。  会長が手短に号令と解散を言い放つと、蜘蛛の子を散らすように全員が動き出す。すでにペア同士で固まっていたようだ。  ……この学園の生徒会信者ぶりは健在、か。  しかしここ最近のごたごたがまるで嘘だったような修復ぶりを、果たして諸手に喜んで良いものか。  まあいい、今は忘れよう。  携帯をタップしペアの相手からの連絡を確認すると、「入場ゲートの付近のクマ様の置物の傍で待っています」とのこと。  ……あの人、ナンパされてねえかな。  ほんと貸し切りで良かった。あと制服で良かった。普通に一般人に紛れてたらやすやすと性別の壁を超える危なっかしい人だからな。  そして見つけた、入場口の片隅。に。 「……すみません、待たせましたか?」 「いいえ、わたくしも今し方到着しましたところです。お気になさらないで下さいませ」  女子が。  下スカートじゃないだけの女子が。  こんなムッサイ野郎しかいねえ学園に! 女子が!! デートの待ち合わせの定番みたいなことを言っている……!! 「……支倉様? どうなさいました?」 「なんでも……ありませんん……っ」  荒んでいた心がみるみる浄化されていく。  そこにいたのは、黒く艶やかな長い髪を結い上げた姿勢の正しい大和撫……大和男子。  その名も、園陵千歳(そのおか-ちとせ)先輩。  風紀の実質ナンバー2であり、抱きたいランキング2位の御方。  一般生徒からは《ベガ》様、または《織姫君》と呼ばれ、もはや性別を超越している存在。由緒正しき名家の生まれで、佇まいからも気品のカンストが見て取れる。  性格はまさに温厚篤実、清廉潔白。  ちなみに別名の由来は風紀のツートップが七夕生まれという偶然から、らしい。 「では、改めまして。お早う御座います。不束者ですが、2日間宜しくお願い致します、支倉様」 「女神?」 「……? どうなさったのです?」 「いえ、お気になさらず……こちらこそ、宜しくお願いします」  よくよく考えなくてもこのシチュ、完璧にデートじゃね? 純然なる遊園地デートじゃね?  もう歓迎祭なんてどうでもいい。王道がどうとかもう知らない。  無駄にどきどきした。女子力高すぎて錯覚するわ。俺もそろそろ男子校に染まってきたかと思えばそうでもなかった。本当に良かった。  微笑む姿がめっちゃ美人。  不意打ちで見てしまった野郎共、息してる? 皆、息してるー?  待って、さっきから俺のポーカーフェイスが危うい。自重しろ。 「では参りましょうか、支倉様」 「はい!!」  とにかく、俺に久しく忘れていたときめきを思い出させてくれてありがとうございます、園陵先輩。  

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