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俺単体に対しては怯えが勝って目を逸らすのに、俺が二人のどちらかと絡むと篠崎くんは目を爛々とさせて俺(と彼ら)をガン見する。
個人的感情とBL観察は別腹ってワケか?
かと思えばふと俯いていることもあるし、最近の若者は情緒がわからん。
しかし今はまず、わんこを注意せねば。
タツキは会長とはまた違う意味でぐいぐい来るからほんと驚く。今のは不意打ちだった。
生徒会以外の人間にこの距離感はさすがにやらないと思うけど、本人に自覚がないから少々厄介だ。
「タツキ。……あまり、他の生徒にはこのようなことをなさらないようにしてくださいね」
「……? ……わかっ、……た……」
こてんと首を傾げ(可愛い)、不思議そうにしながらもとりあえず了承された。やはり大して意識せずにやっていたらしい。
一応注意しておかないと、どこで被害を広げるかわかったもんじゃない。
そんなつもりで何気なく話して、食べ終わった包みを捨てに行こうと席を立った。
しかしどういうわけか、他の二人が固まっている。片方はふるふると震え、もう片方は口元に手を添えて驚いている(さすが女子力)。
なんだこの反応。
なんかおかしなこと言った?
「……支倉様。その御言葉、他の方がきいていたら、勘違いしてしまうかもしれません」
「え? 勘違い?」
「『私以外の生徒にはしないで』、って……こと、ですか……殺し文句……」
あ、言葉選びミスった気がする。腐男子が息をしていない。すべて小声のつもりでも、全部聞こえてっからな。俺の聴覚をナメるなよ。
この場合は彼らの解釈がおかしい。……けど、園陵先輩まで言うってことはやっぱ言い方を間違えたか?
「……仲が、よろしいのですね。生徒会の皆様は」
ふわりと、自分のことのように嬉しそうに笑う園陵先輩の笑顔がまぶしい。女神のごとき。
そういえば、似たようなことは以前言われたことがある。リウから。「同じ相手を想うわりにはギスギスしないよね」、と。
まあ、王道関係のことを言うなら、会長の不在が多かったこともあって険悪になりようがなかった、というか。
会長がもうちょい頑張って王道を攻め始めれば、たぶん自然と仲悪くなっていくんじゃなかろうか。
園陵先輩の一言によってどこか居たたまれなさそうに俯いた篠崎くんの様子も、頭に入れておくとして。
「「…………」」
同じ生徒会役員であるタツキと目があったので、お互い苦笑いを返す。当事者から言わせれば、「そうか?」としか。
周りからはそう見えているのかと、半ば達観した気持ちで。
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