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王道、すなわち佐久間ルイにとって親衛隊とは、自分に『逆恨み』する人間達、つまりは『敵』としか認識していないと思う。
王道の視点からすれば、勝手に惚れられただけなのに何故自分がイジメの対象になるんだ、と親衛隊の制裁を理不尽に思うのも仕方ない。
俺としても立場上問題を起こして欲しくないので、親衛隊には度々厳しい目を向けることもある。
ただ、篠崎くんの話をきいていると。
「最初、佐久間が生徒会の皆様を虜にしたと聞いたときは……まあその、驚い……たけど、どこか、僕からは遠い世界の出来事でした。傍観者として端から見てる分には、歯痒くはあっても、ここまで辛くはなかったんです」
「…………」
「でも。純粋に慕っていた人を、こう……突然現れて横から掠めとられる感覚は、……あまり、いいものじゃないです。僕も自分がそういう立場になってやっと、他の親衛隊の人達の気持ちが分かったんですけど。
佐久間が人気者を落とせば落とすほど、………願いましたよ。佐々部様だけには関わらないでくれって。あの人までとっていかないでくれって」
これに関して、俺はあまり偉そうなことを言えない。何せ、偽りとはいえ真っ先に王道ルートに乗った首謀者なわけだから。
俺にも親衛隊はいる。彼らが食堂イベント以来大層傷付いてるのも知っている。
暴力沙汰のような目に見える問題だけじゃなく、拒食や不登校になったケースも耳に届いている。
なかなかの人格者で頼りになる俺の親衛隊隊長(並びに親衛隊幹部)のおかげで今はそれらも落ち着いたそうだけれど、そいつでさえ動揺を隠せていなかった。
一応は『平等』を謳う生徒会だ。裏切られたという気持ちも皆無ではなかっただろう。
自分の行動がこんなにも周囲に影響を与えるのだと、振り返って省みたものだ。
……まあ、生徒会といっても一人の人間ぽっち、誰を好きになっても自由だろ、という考えも棄ててはいないが。
「不祥事ばかりを起こす親衛隊が偉そうなコト言うなって話ですが……僕からすれば、佐久間だって理不尽な存在だと……、思わずにはいられないんです」
俺の感覚から言わせれば、佐久間ルイのどこに一部信者が惹かれているのか理解できなくはあるけれど。
確かに端から見ていれば、王道という存在の影響力は自分たちの今までの常識を壊す恐ろしいもので、理不尽な存在なのかもしれない。
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