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「す────すすすすみません、自分勝手なことを吐き出しちゃって……。ふ、不愉快に思われたなら如何なる罰も……!」
「……いえ、ここを降りたら忘れる話です。不愉快も何も、ありませんよ。ご安心下さい」
「よっ……よかったぁぁ~~」
断罪を待つ咎人が無罪放免を言い渡されたような、心の底からの安堵が篠崎くんの顔に広がる。
本人も、賭けだったのかもな。
生徒会の一員、しかも一応王道に惚れてる相手に話す内容としては、かなり緊張感を伴ったことだろう。
それでも俺に親衛隊の実情を訴えたということは、きっと彼なりに現状を変えたいという意志があるから。
尊重すべきところはしておこう。
ただ、篠崎くん個人の主張もわからなくはないけれど、親衛隊までもが応援してくれてる環境なら、佐々部さんと王道がくっつくのも可能性としてアリだとは思う。
理解はしてやれても賛同とまではいかない。それはそれこれはこれだ。どういう心境であれ、人の恋路に口を出すのは野暮だと思う。
……ひとまずは、成り行きを見守ろう。
「あのっ、ここでしか聞けないから聞いちゃいますけど!! 副会長様はおうっ佐久間のどこをどう好きになられたんですかっ!」
「えっ」
バッと前傾姿勢をとった篠崎くんの問いに、すぐには応答できなかった。
いつもは「ルイは私の陰り(嘘の笑顔)を照らしてくれたのです……(哀愁)」みたいな口から砂吐く台詞を用意しているけど、生粋の腐男子に王道副会長テンプレの台詞が通じるだろうか。どないしよう。
「お疲れさまでーす」
「……あっ」
あ、よかった。間一髪。
残念そうに声を上げた篠崎くんが、係員の声に渋々立ち上がる。
先に降りた俺は手を差し伸べてエスコートの真似。途端に茹で蛸と化した篠崎くんが、恐る恐る手をのせる。これでさっきの質問を忘れてくれたら嬉しいなあなんて。
目指す先はタツキと園陵先輩という名のオアシス。
「お疲れ様でした」
「……おかえり……」
いろんな意味を込められた、お疲れとお帰りの言葉だった。
先に降りて待っていた二人と合流し、その後は閉園まで散策を再開。
篠崎くんもどうやら吐き出してスッキリしたらしく、たまに妄想が暴発しながらも終始楽しそうだった。
三年生二人もこれには安心した様子。
そう、これは歓迎祭で、彼は一年生。
例えどんな相手だろうと、それが親衛隊だろうと腐男子だろうと、一年全員に存分に楽しんでもらうことが、この行事の主旨であり、歓迎する側の務めなのです。
「りお……いい、せんぱい……なれる」
「……どうも」
そしてこの先輩は後輩への評価が砂糖過多で対応に困るのだ。ちょっと照れるだろうが。
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