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つかの間の談笑タイムの間にも、エレベーターはぐんぐん上昇する。
俺たちが今夜泊まる部屋は最上階のひとつ下だ。ちなみに最上階はバーで、屋上にはプールがある。
エレベーターに乗り込む際にルームキーをかざして階数をインプットさせたので、その階に辿り着くまでこの箱が止まることはない。セキュリティの問題で色々と利点があるそうな。
ついでに言うと、リウは同じ敷地内でも俺とは別のホテルに泊まっていると先ほど連絡がきた。リウが近くにいないなら今夜は安眠が期待できそう。
そう思った矢先のことだった。
とりとめのない雑談を交わしながら上階へ上がり、広い廊下を歩いて目的の部屋の前に辿り着いたタイミングで、隣(といってもそこそこの距離)の部屋から出てくるふたつの人影を察知。
「……すみませんが、先輩。何も聞かずに先にお入りください」
「え……はい、」
園陵先輩が何か言う前に先に部屋へ通した。叶うなら一緒に入りたかった。
俺たちの部屋の扉が閉まったその音でこちらの存在に気付いた二人の、片方を認識して俺のくちから自然と漏れたため息は鉛のように深く重い。
「はぁ……バ会長が隣室……」
「開口一番なんて態度だ。いい度胸だなリオ」
誰だよ安眠が期待できそうとか思ったやつ……俺だよ………。
学園の寮と同じく、上層階に宿泊できる生徒は大概『役職持ち』や『親衛隊持ち』に限られてくるから、その予感も視野にいれてはいたけども。
先週の下見のときは細かい部屋割りまで組み立てるには時間が押してて、結局大部分はホテル任せになってしまったもんなあ……。
脳内で頭を抱える俺をよそに、会長と、もう一人が近づいてきた。
「先月の《月例会議》以来か? 久しいな、副会長殿」
「……こんばんは、二葉先輩」
黙っていれば冷淡とした印象を受けるその冷たい貌が、俺を見下ろして柔らかく笑った。それだけでクールなイメージはひっくり返る。
保健委員長の、二葉藍 先輩だ。
『役職持ち』の三年生で、会長やタツキとも交流があり、俺ともそこそこ世間話をする間柄。
見た目(見た目はな)物腰の柔らかい知的な雰囲気を持つ人で、180越えのすらりとした東洋美男。純和風な顔立ちと紫紺がかった黒髪、そして右目の下の泣きぼくろがさらにミステリアスな雰囲気を醸し出している。
ただ、性格は、ちょっと、変わってる。かな。
しかし、この人が会長とペアか。
会長と。すなわち絶倫無節操ヤローと。これから一晩部屋を共にするのか。
「……会長、いくら防音で監視がない密室だとしても、隣の部屋で不純な行為に及ばないで下さいね」
「お前は俺様を何だと思ってんだ」
「《闇豹》様。毎夜発情するケダモノ」
「否定はしない」
しろ。
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