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 会長の相手をしたところで話が一向に進まないことは一億と二千年前からわかりきっているので、面白そうに俺達の掛け合いを見ている二葉先輩にシフトチェンジ。 「二葉先輩、何かあればコールを下さい。襲われそうになった場合は多少の暴力もやむを得…………ん? むしろ再起不能にした方が手っ取り早いんでしょうか……?」 「バァカんなことしたら世界中の女が泣くぞ」 「言うほど女性も期待してませんよ」 「証明してやろうか」 「それを防ぐための再起不能案です。二葉先輩、いざとなったら迷わずどうぞ」 「テメ、だから」 「副会長殿。その心配は御座らんよ」  バ会長がちゃちゃいれるせいで脱線しまくる応酬(言い返す俺も悪いことはわかってる)が一旦止まる。  ちなみに二葉先輩のこの古風な口調、出会ったときからこれだ。芝居がかった過剰な抑揚もなく、素のトーンでいつもこう。  わざとなのかそういう(?)生まれなのか尋ねたら、『ただの癖』だと答えられた。  ひとことで纏めると、まあ、変わったひとだ。  そんな二葉先輩が大丈夫って言うのなら多分大丈夫なんだと思う。  そもそも会長はこれでも、これでも、本気で嫌がる相手と無理矢理致すほどゲスな性格じゃねえから、実のところそんなに心配もしていない。  ただ、相手に少しでもその気があれば口説き落としたり丸め込んだりはしそうだけども。 「神宮は例え何があろうと我に手を出すことはなかろう。(つなぎ)が一度でも(ねろ)うたことのある人間を相手にすると、食う気がこれっぽっちも起きんらしい」 「アイツと穴兄弟なんて死んでもごめんだからな。例え可能性の段階であっても」 「というて、繋と好みが被ることくらいいくらでもあるのではないか?」 「ああ? 被ってねえよ」 「何を言うか。お主も繋も、勝ち気な気質が愛《う》いのだろう?」  つなぎ……?  服のツナギのことかと思ったが、イントネーション的に多分違う。  首を傾げれば、養護教諭の神宮繋センセーのことだと教えてくれた。今後保健室に行く気はこれっぽっちもないのでいらない情報だ。削除。  話題の中心である会長はといえば、どこか居心地悪そうというか、不機嫌なときの顔。  従兄弟っつってたな。そういえば。  縁者に対する気まずさっつーか、お年頃? 対抗意識? そんな感じか?  先日の第二保健室のやり取りでも険悪さは感じなかったから、金持ちに有りがちなドロッドロした跡継ぎ問題とかはなさそうだ。  あったところで俺には関係ねえが。  とりあえず、自分が手を出せない相手と偶然ペアになってしまうとは、会長ざまあ。今夜なり学園に帰ってなり絶対食う気だっただろうから、その興醒めぶりも踏まえて何度だって言おう、会長ざっまあ。 「これはこれは失礼致しました。会長、元気を(笑)出して(笑)下さい(笑)(笑)(笑)」 「……イイ笑顔だなお前」 「性質の悪さが神宮と張る勢いだな」  何を言うか。  性質の悪さでいけば俺なんて可愛いレベルだ。第一、恐らくこの組み合わせを推奨して裏で操作した張本人は、元より────。 「私程度ならまだ生温いものでしょう? 会長と張るというのなら、志紀本先輩の方がもっと、」 「───あの男と俺を比較するつもりか?」  あ。  ま、ずい。  

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