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 ようやく一息つけると部屋に戻ったらそれはそれで、俺の拷問タイムが再開されたようです。  園陵先輩がパジャマ代わりに持参したという霞色の着流し姿(レア5)を前に多幸感に浸っていられるほど現実は甘くなかった模様。 「……たたた、大変申し訳ありませんでした。つい、夢中になってしまって。お喋りが過ぎました」 「………いえ、だいじょぶです」  部屋に戻って湯船に浸かって、お喋りすることかれこれ一時間。  やっと、やっと、質問攻めが終わった……。  なにが悲しくて会長カッケーとしか言わない人にバ会長の好感度アップなネタを提供しなきゃならんのだ。俺の会長像が麻痺してきた。  あ、話は変えるけど、フルーツ牛乳を一生懸命飲む先輩はたいへん愛らしかったです。  初めての体験を本当に楽しそうに受けとめてくれるから、ついつい色んな初めてを教えてあげたくなってしまう。  ただ、こういうのはさじ加減が大事だ。  親切も行き過ぎれば自己満足にしかならない。 「そろそろお休みしましょうか……夜も更けてまいりましたし」 「はい。その、申し訳ないです。わたくしが喋り過ぎたばかりにこんなお時間まで……」 「よ、夜更かしもお泊まりの醍醐味ですから、どうかお気になさらないで。では、明かりを消しますね」  ぱちりと間接照明の光を落としたものの、イルミネーションの光によって完全な暗闇とはならなかった。  わあーキレー……、なんて浸るタイプでもないので、さっさと寝ることにする。お休みなさい。 「……支倉様。もう、お休みになられました?」  ベッドイン(語弊)してから数十分。  なかなか寝付けなくて寝返りを繰り返していると、そっと、背後から先輩に声をかけられた。  俺にとって一番、眠りの淵で馴染みが深いのは元同室者の紘野の声だが、園陵先輩の優しい声も静かで心を落ち着かせる。  返事をする代わりに少し身動ぎをして、衣擦れの音をたてる。数拍の沈黙を要した後、先輩が再びくちを開いた。  とてもとても小さな、呟きを。 「……無礼を承知して、申し上げます。本当に、去年と比べれば、貴方は大人びました。いいえ、大人のように、何でもないように振る舞うことが、上手くなりました」 「………」  ───実を言うと。  一年のころ、特に入学したばかりの去年の今頃の俺は、学園にうまく馴染めていなかった。  あの、俺を学園に引っ張ってきたリウが、あのリウが、あのゲスな馴染みが、多少の罪悪感を抱くくらいには。  常に周りと距離を置いて、丁寧な口調を徹底することで他人とのあいだに線を引いて。最小限の交流の中でのみ、生活していた。  

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