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閉園時刻まで30分を切り、混雑する土産物屋。そこでリウと遭遇した。
お互いが獲得したピンバッチを照らし合わせ、ノルマクリアに双方の健闘をたたえる。協力的なペアを持ててお互い幸運だった。
ちなみリウのペアは王道の取り巻きのひとり、可愛い顔した腐男子一年生だったそうで、友情が芽生えたらしい。
周りに生徒がぽつぽついるので小声で会話を続けながらも、俺は買い物かごを取ってキャラクターブースへ向かう。
豊富な種類のデザインを吟味しては、かごへと放り込んでいく。
「うわー、リオってばギャップ萌え狙ってんの? 副会長様って意外とキャラクターグッズ集めてるんだってーかーわーいーいーみたいな?」
「黙りなさい。私ではなくて、これは紗世《さよ》へのお土産です」
「出たー、シスコン」
リウが砂を吐きそうな顔をした。
シスコンだなんて人聞きが悪い、今年の春から小学一年生になった年の離れた可愛い妹に必要だろうと思ってお兄ちゃんはだな……。
「へーさあすがー、女の子が好きそうなものをわかっていらっしゃる」
「勝手に漁らないでいただけます?」
「でもつかぬことを聞いていい? このくまさん型防犯ブザーを本気で贈る気?」
「自衛のためでしょう。必須です」
「……。わあ、可愛いシュシュだねー。紗世ちゃん喜ぶだろうなー」
「そうですね、きっと贈り主にヘアアレンジした写真を送ってくれるはずです」
「…………。このレターセット、小学一年生に贈るのは重くない? 可哀想じゃない? まだ漢字習いたてのレベルでしょ??」
「心配ありません。『ママといっしょにかいたよ』と添えてくださる律儀な子ですから」
「愛が重い」
「黙りなさい」
茶トラのにゃんことまろまゆわんこのぬいぐるみを見比べ、どっちがより俺に似ているかリウに尋ねる。呆れきった顔で「ねこ一択」と言われたので、今度はぬいぐるみに着せる服と挟み込むメッセージカードの色とかたちで悩みに悩む。
妹に会うまで妹の傍にいる俺の分身だ、かっこいいイケ猫に仕上げねば。
「紗世ちゃんへのお土産もいいけど、親へのお土産選びにもちゃんと付き合ってよ」
「温泉券があるだろ」
「ママ勢じゃなくてパパ勢。お菓子くらい買った方がいいって。ただでさえママが大好きなのに温泉で引き離すことになったら……」
「あー……そうするか」
「じゃん、けん、」
「ちょき」「ぐー」
負けた!
ということで俺が支払いを持つことに。
うちの親父は食いものでも買っておけば満足しそうだが、問題はリウの父さんだ。一見温厚な優男風なのだが、莉奈さんが大好きすぎて怒らせるとまあ怖い。
テーマパーク名物のバームクーヘンをパパ勢への贈り物にして、デザインが可愛いドロップボックスを愛しの妹に、あとはリウと合わせて揃いのマグカップをママ勢に贈る。
はあ、散財。
「そういえば紘野くんとお化け屋敷、行ったんだって?」
「……どこでそれを」
「そっちのエリアにいた親衛隊の子から聞いたんだよ。この学園の腐男子の連絡網って、ちょっとすごいね」
お前が言うと凄みが増すんだが。
まあ、周りの目があると知りながら紘野の腕を引っ張って堂々と屋敷まで向かった俺も悪いし、屋敷の中の出来事までは知られてなければもうどうだっていいけど。
園陵先輩にもピンバッチを渡せたし、めでたしめでたし。
「あ、そうだ。遊園地のお化け役って、基本的に客に触ったら駄目らしいよ」
「……まじ?」
「うん。相手に怪我させたらダメだしね。ほら、例えば階段とか、危ない場所ではなんの仕掛けもなかったでしょ? 特に相手は学園生だもの、だいぶ気を使ってたと思うよ」
「確かに……」
よくよく考えれば、納得が行くな。
そうか、今まで苦手意識が働いて嫌がっていたけど、そう考えると怖くないかも。
お化け役も所詮は同じ人間なわけだし。
「--あ、わかってる? 要するに、誰も自分に触れないハズなのに、もしも、「触られた」って感覚があった場合は……ネぇ?」
「え……、…ぁッ!」
もう絶対に行かないと心に決めた、高二の春。
帰りは行きと同様生徒会専用車両に乗り、うとうととするたびに眠気と格闘しながらも、双子が語る感想をBGMにまったり過ごした。双子かわいい。
マツリも聞き役に徹し、タツキは行きと同様おやスヤァ。
そして会長がつどつど感想を漏らすたびに、微笑ましげな目を送る。はじめてのゆうえんち、おつかれさまでした。
「バレてねえとでも思ってんのか」
「……失礼しました」
そうしていればあっという間に時間は過ぎ、無事に帰宅。
今週末は中間考査とかほんとしねばいい。
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