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歓迎祭後・翌日の朝 1
*
おはよう、ござい、まーす……。
「ねむ……、」
手探りでサイドテーブルに手を伸ばし、セットしたアラームを止める。
いつもの習慣で6時前に起きてしまった。
昨日の歓迎祭の振り替え休日で、今日と明日は休講だ。
もう少し寝ていようかなと思わんでもないが、正直二度寝したいところだが、やることもあるのでぐだぐだもしていられない。
明日からは考査に向けてみっちり復習する。ここで成績を落としたら『佐久間ルイにうつつを抜かしたせいで』と勝手に解釈されかねない。
明日からの時間を勉学に充てるためにも、今日片付けるべき仕事はさっさと片付けるのだ。
天蓋付きのベッドから仕方なく起床した。
「よ、い、しょ」
き、筋肉痛だと……? そんな馬鹿な。
軽く体をほぐして遮光カーテンを開けると、東向きの大窓から朝陽が昇っていた。白とブラウンと金を基調とした寝室が、まばゆく照らされる。
ここは生徒会専用寮の、生徒会副会長の部屋。
一般寮より段違いで部屋も広ければ天井も高い。それもそのはず、ここは一フロアにつき一人部屋なのだ。
生徒会寮の周囲は鬱蒼とならない程度に木々が囲み、一般寮や校舎からはちょっと離れたとこにある。
ちなみに俺の部屋は5階。
メゾネットタイプのデザイナーズマンション。
不在の間に清掃員が入ったようで、月曜の朝からたいへん空気がよろしい。
顔を洗って歯を磨いて、制服に着替えて髪を整えて。
いつもの『副会長』が隙なくできあがっていることを姿見で確認し、キーケースと携帯と生徒手帳を入れたクラッチバッグを片手に部屋を後にする。
落ち着いたダークブラウンのフロアマットが敷かれた廊下を進み、無人のエレベーターへ。
寮の一階、まっさらな大理石のエントランスに降り立つと、馴染みの顔が観葉植物に水を与えているところだった。
「……あれ、支倉くん? おはよう。こんな朝早くからどうしたの? 今日は学校、お休みじゃなかったかな?」
「おはようございます、守衛さん。今日中に片付けておきたい仕事がいくつかあるので、生徒会室に行って来ます」
「それで制服かぁ。休日までご苦労様。まじめな君にもこれをあげよう」
そう言って、掌の上に乗せられたのは複数のドロップキャンディ。透明のセロハンに包まれた色とりどりの飴玉が艶々と光を弾く。
にこやかな笑顔で俺を迎えてくれたのは、生徒会専用寮の守衛を勤める八雲 さんだ。
まあ、『生徒会専用寮専属』の門番というか、警備員みたいなひとで、生徒会役員のおっかけや危害を加えようと近付く一般生徒を阻むためのガードマンをしてくれている。
虫も殺せないような知的エリート優男の風貌でありながら、実はとても腕っぷしが強い。
「勤勉が悪いことだとは言わないけど、適度に休むんだよ? 他の子達にも言っておいてね」
そんなに年も離れていないだろうに、守衛さんは俺達のことをまるで小さなこどものように扱う。
こういう大人は、実は学園内でも珍しい。
この学園には教師や大人でも生徒会や坊ちゃんに従順な人間が大多数なのに、肝が据わっていのか元からこういう性格なのか、守衛さんは素でこうだ。
個人的には好ましい。
ぺこりと頭を下げて、生徒会寮を後にする。
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