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* 「……マツリ?」  A.M8:30。  部屋にふわりと漂うコーヒーの香り。  生徒会室に到着した俺は、意外な先客の存在に気付いて数秒ほどその場で動きを止めた。  三人掛け用のソファーに深く座り、静かに寝息をたてていたのは会計のマツリだった。  俺が入室しても身動ぎひとつすることなく、目を覚ます気配はない。テーブルにのったマグカップから察するに、一息つこうと思ったらうっかり寝オチしてしまった、ってところだろう。  白ベースに黒いラインが入ったシンプルなマグには、微かに湯気が漂うコーヒーの気配。まだ温かいということは、眠りについてからそれほど時間も経過してなさそう。  横になればいいのに。  いくら高級なソファーとはいえ、座ったままの体勢では寝辛そうだ。  一旦ソファーを通りすぎ、次に目をやったのはマツリの机上。 「……おおー…」  思わず感嘆。  そこにはチェック済みの書類が種類ごとに重ねられており、一番上にはご丁寧に走り書きのメモが置いてある。まさか一晩で捌いたのか、この量を。  こいつの仕事捌きには同学年ながら舌を巻く。  早いし正確だしミスがないし、何より効率が良い。生徒会業務の中でも特に重要な金回りを安心して任せられる役員の存在は非常に心強い。  まあ、もともと去年の暮れに俺自身が生徒会に引き入れた人材だ。優秀で当然、と自画自賛。サボり癖はなおらずとも、そのぶんきっちり仕事を片付けるところは評価している。  ただ、寝る間を惜しんで働いてくれるとは思わなかったから、驚いてはいるが。  こうして誰に気づかれずとも裏でせっせと仕事を片付けて、けれど俺たちの前では疲労も何も見せず「終わったよー」なんてゆるい調子で言うのだろう。  ……こいつが顔以外でモテる理由の片鱗が見えた気がする。  

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