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生徒会室のとある私室にて。
勢いよく開かれた扉の隙間からプライベートルームへと身体をねじ込んだ男は、入ってきたときと同じ勢いのまま扉を閉める。
随分と大きな音が響き渡ったが、先ほどまでいた場所とはフロアが違うこともあり、彼の耳には届いていないはずだ。
……彼。
あの秀麗な顔に笑みを浮かべ、よく通る静かな声で労りを告げた麗人。
彼とのやりとりを反芻し、ズルズルと凭れるように座り込んだ。
防音がしっかりなされているため、無駄に広い室内は無音。
そこでは己の鼓動と熱い溜息だけが確かに息づいていた。
「は、ッあ……。ちくしょ、う」
油断していた、と。
ぽつり、落とされる苦い声。
掠れた言葉は切なさを多分に内包していた。
その体勢のまま俯いて、癖のとれた長い前髪をかきあげる。
現れた目元は赤く、そして苦しげだった。
「………落ち着け」
目を伏せる。
その声から汲み取れるものは、日頃無節操で知られる男とは思えないほどの焦りと、動揺と、
(……知られるわけにはいかないんだ、)
掻き毟るほどの、渇望。
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