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それと同時刻。
生徒会会計が所有する私室の、隣のまた隣。
遮音効果が付与された部屋内にいてもマツリが行った扉の激しい開閉音に気づけたのは、部屋の主の一人が退出のためすでにドアノブに手をかけていたおかげに他ならない。
そしてもう一人のベッドに居座る「部外者」へと、それを伝える。
「マツもおわったみたいだよ、仕事」
「へえ、さすが。優秀ー」
「そりゃあ、りっちゃんの指示ならすぐに片付けるでしょ、マツは」
「……君は?」
「さあね」
その名を表す同じアオが、ふたつ。
まるで一人二役でもしているかのような、耳障りのいいアルトボイス。
どちらが兄で弟なのか。
いまこの場でハッキリさせる必要はない。
生徒会補佐としての仕事をあらかた片付け、普段の愛らしさとは異なる異様な雰囲気で向き合う双子の兄弟。
「いつも通り……たのむよ」
その言葉を最後に、目もあわせず自分の部屋へと帰っていく片割れ。
残された方は片割れの後ろ姿を目で追いながら、隠しきれない歪んだ表情もそのままに深い溜め息をついた。
────誰しも秘密を持っている。
偽りがあるのは何も、彼だけではない。
* * *
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