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「そこの御三方。お話を詳しくうかがっても宜しいですか」 「あ゙?」 「んー? ………、 え」 「副っ……こ、光様……!?」  三者三様で様々な反応を返してくれたトリオの顔には、しかと見覚えがあった。  王道の取り巻きその一その二その三だ。 「これは一体どういう状況なのでしょう」 「テメェには関係ねェ。失せろ」  その一が、いつの間にか王道の取り巻きに加わっていた一匹狼枠の東谷(あずまや)。  ツーブロックの暗い赤髪と鋭い三白眼がさらに人相の悪さに拍車をかけている。強面だが、美形の部類に入る。  王道信者に加わってからというもの、俺を含め生徒会の人間にはがんがんメンチ切ってくる切れたナイフ系DQN。露骨な敵意が痛いのなんの。 「東谷、そう言うなって。ここで見てるだけの俺らだって、厳密には無関係になるんだからさ」 「……ウゼェ」  その二、食堂イベントでも見かけた、爽やか枠の(けやき)くん。  確か、サッカー部のコだ。中等部ではキャプテンを務めていたそうで、一学年の中でたった三人しかいない数少ない『親衛隊持ち』。  少し焼けた肌と、あどけなさと爽やかさを内包した顔立ち、さらにそこにスポーツ万能を加えればそらモテるだろう。  俺が声をかけたときはさすがに驚いて鳩豆顔になっていたが、すぐに切り替えて東谷を宥めるくらいには冷静なようだ。 「そ、それが……ルイくんに、カンニングの疑いがかけられているみたいで……。ちょうど最後の、外国語科目で。ルイくんの机の中にカンニングペーパーが入ってたって……それで……」  そして残る一人が、こちらも食堂イベントで見かけ、さらに先日図書館での記憶も新しい腐男子・駒井(こまい)くん。  こうしてまじまじと見るのは初めてだが……うーん……けっこう可愛いな……。  ふわりとした黒髪ボブと下がり眉に加え、服の裾をぎゅっと握りながら緊張した面持ちでおどおど説明する様が、男の庇護欲を掻き立てる。これぞ男の娘だ。こっそり駒井ちゃんと呼ぼう。  しかし、新歓でペアになったリウと繋がりがあることも勿論忘れてはいない。可愛いが、油断は禁物だ。  さて───どうしたものか。 「ルイがやったという確証はあるのですか?」 「うーーん……俺らもよくわかんないんですけど、筆跡が佐久間のモノだったらしいんです。トイレ以外ほとんど立ち歩いてないし、佐久間以外の人間が仕込むのは難しいだろうって」 「……あの三角関係もどきは?」 「あーー……うちのクラス、最終考査は熊センセが試験官だったんです。で、熊センセが見つけて、幹センセが話を聞きつけて、こうなっちゃって」  なるほど、クマちゃんが王道を連行した経緯はわかった。しかしあのホスト教師はなんなんだ。随分と歪曲された伝わり方をしてないか。  それにしても、カンニング、なぁ……。  厄介ごとに関わるつもりはなかったが、これは少しばかり、気になる案件だ。  何せ俺は王道の性格及び成績を知っている。不正できる性格じゃないのは明らかだし、編入試験満点という結果を考えれば不正の必要性を感じない。  現在学園で針のむしろ状態の現状を考えると、王道が誰かに嵌められたと推測する方が自然とも思える。  関わりを持ちたくないといっても、さすがにこの案件は、立場上見過ごせない。  単に親衛隊の嫌がらせと取るか、成績上位者へのやっかみと取るか、あるいは。それにしても悪質な。  まあ、犯人探しを買って出るほど人が良いわけでも正義感あふれるタイプでもない。何より自分の用事が最優先だ。ひとまずはこの状況の収束が第一。  はやくクマちゃんをバカ共から解放してやらねば。  ふう、と一拍置いて、渦中へと自ら近付く。 「───この場を何処だとお考えですか。揉め事はお控えいただきたいのですが。……何か、問題でも?」  目上の人間に対して上から目線で注意なんて、本来進んでしたくはないのだが、もはや慣れてしまった。  この学園の生徒会という権力は、それほどに。大きい。  

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