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「──リオてめぇ……。あの怠慢教師の生け贄に俺様を差し出して自分はさっさと逃亡するたぁいい度胸してんじゃねぇか……!」
「無事に解放されたなら良かったじゃないですかあ。私に当たらないで下さい」
ようやく会長サマのご登場である。
せっかく注いだカップを今度は会長に横取りされ、俺の手元は再びからっぽになった。
飲み下すたび上下する喉仏をじっと見上げる。
案の定機嫌が悪い。めんどくせ。
「なんでこの俺が朝から趣味でもねえ話を延々と聞かされなきゃなンねぇんだふざけんな頭痛ぇ」
「何故この私が朝からバ会長の世話を焼かされなければならなかったのか、そのあたりを考えてから発言していただきたいものです」
「要は今朝のことで腹立ったから当てつけに藤戸を押し付けたんだろ」
「あ、そろそろ会長の出番ですよ大変大変」
「話題逸らしあからさま過ぎんだろ聞けよオイ」
「まあまあさっさと集会切り上げてついでに今朝のことも水に流して来てくだ、さいっ」
背中をぐいぐい押し、ステージへ向かわせる。
会長の登場で沸き立つ歓声にまぎれ、後で覚えてろという捨て台詞が聞こえたがもう忘れた。俺知らない。
当てつけだなんてとんでもない。
今朝、わざわざ部屋まで迎えにきてやった俺をベッドに引きずり込もうとした仕返しにしては藤戸氏のオタ話聞くくらい軽いもんだろ俺は絶対に聞きたくないけど。
会長の遅刻のせいで一時ストップした集会を仕切り直すため、再びマイクのスイッチをオンに。
『大変長らくお待たせ致しました。会長が遅刻した分の授業時間のロスは会長が責任を持って下さるそうなのでご安心を。では会長、大して役に立たないお話をどうぞ』
『てンめ、今朝押し倒したことまだ根に持ってンのか!』
「「ッ、キャアアアア!!」」
『……なんのことをおっしゃってるのかちょっとよくわからないです』
「既成事実キターーー!!!」
「うぅ、ショック……闇豹さまぁ……」
「相手が会長様なら仕方がな……ぐす」
馬鹿野郎マイク越しになんてことをバラしやがるんだクソアマ。つーか誤解生むような情報だけ公表すんな。あんたが寝ぼけてやっただけだから。そもそも未遂。ここ重要。
腐男子や親衛隊がそこかしこでザワザワしてんだろやめろ。泣くなよ余計リアルだろ。会長の寝起きの最悪さは公害だもう二度と起こしに行かない。
会長の大して有り難くもない挨拶が始まって、カチ、とマイクをオフにする。
それはそうと───良かった、志紀本先輩と会長が入れ違いになって。
あの二人の仲の悪さは尋常じゃない。
二人が同じ空気を吸う空間に鉢合わせたらと、考えただけで胃に穴があきそうだ。
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