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「お前はこの週末でいったい何人とフラグ建築したの?」 「没収した同人誌、切り刻んで処分して差し上げましょうか」 「やめろ下さい」  中間考査の結果は上々。  めでたく腐男子を二位に蹴落とせたので、勝者の特権としてこいつがこそこそ所持していた会長×俺をモデルとしたいかがわしい薄い本を取り上げた。  リウのしかめっ面は最高潮。  ここ教室な。周りに人いるからな。化けの皮が剥がれかけてんぞー。別にバレたところで俺は痛くも痒くもないけど。 「紘野とお前、先週の金曜日お泊まりしたってネタが上がってんだけど」 「言葉の通りです。ただ泊まっただけ。あなたの妄想の糧になるようなやましいことは一切ありませんでしたよ」 「泊まりと聞いて妄想しない腐男子がいると思う?」 「滅べばいい」 「今朝の会長の発言の真偽のほどは?」 「バ会長の問題発言はいつものことでしょう」 「……本当に何もない?」 「本当に何もない」  はあ、とわざとらしく溜め息を吐きやがる。お前はそろそろ俺でBL変換するのやめて素直に王道で萌えてたらいいんじゃないだろうか。  そんな密談の最中、教室の前の扉が開く。  そこから身体半分だけをのぞかせたのは藤戸氏だった。まさか土日で採点を終わらせる集中力があんたにあったとは思わなかったよ。 「中間の結果は見たかああ……? 来月の期末もこの調子で頑張っふああああ」  でかい欠伸をひとつこぼし、ひらひらと手を振って、そのまま出て行った。あれは多分寝るだろう。  好奇心でちらりとAの横顔を確認してみると、案の定苛立った顔。銀フレーム越しの眼差しは鋭く藤戸氏の後ろ姿を追う。  Aの生真面目そうな性格からして、怠慢教師のスタンスがクラスでも受け入れられている現状は苛立つこと頻りだろう。気持ちは分かるし、見目で相手を贔屓目に見ないところは好感が持てる。  だが、Aみたいな少数派は、この学園では窮屈だろうなあとは思う。  あんまりあからさまに敵意を飛ばしていると、追々A自身の首を締めることになりそうだ。  そんなことを考えていたとき、後方の扉を控えめに開けた人物が目に入り、リウも怠慢教師もAのこともぜんぶ吹っ飛んで俺の全意識が持っていかれた。 「おおお、《織姫君》……!?」 「今日も大変麗しい……」 「何故二年のクラスに……?」  夢かこれは。幻想ですかこれは。それとも新手の腐男子の罠?  俺と目があうと相手はたおやかに微笑む。  俺か。用事は俺ですか。  慌てすぎないよう細心の注意を払って廊下へ急ぐ。まって、動悸が。 「園陵先輩……? どう、なさいました?」 「支倉様。本日の放課後のご予定を伺いに参りました。もしお暇であれば……歓迎祭のお礼をさせて下さいませ」  聞きましたか奥さん。遊園地デートの次は放課後デートですって。  もう罠でもいいです喜んで……!!  

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