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"同じ外部生だからこそ副会長は佐久間ルイに目をかけている"と解釈されたところで、俺に大した痛手はない。
むしろ、同じく外部生で特待生の篠崎くんと交流を持ったことだし、そう思われていた方が都合も良い面が増える。
とにかく、はっきりさせることはひとつ。
「その口振りからして、あなたはルイにさほど関心がないと判断しても?」
「ああ、無い。外見にも内面にも、とんと興味が沸かぬ」
「そう。なら、安心しました」
「安心、とな。恋敵とならなかったことに?」
「いえ、これ以上親衛隊が暴徒化しても困りものですから。ルイの信者が増えないに越したことはありません」
これは本心だ。
学園を運営する側として、これ以上一人の生徒を発端に歯車が狂うのは勘弁願いたい。俺が言えたことでもないけれど。
それにしても、タツキ、志紀本先輩ときて、これで三人目か。王道に特別な好意を持たない人気上位陣は。
落胆する腐男子の顔が想像できる。
「……ほう、信者 、か。あまり、耳障りの良い言葉ではないのう?」
何気ない単語を拾われ、迂闊だった言い回しに内心焦りを覚える。
「王道へ好意を寄せる人間」なら使いそうにない表現だと、疑問に思われたか。
今ので俺の 何かを気取ったか。それとも、かまでもかけているのか。
いっそ楽しげにも見える、その表情。
俺の紅茶を奪ったときと同じ、そこには無邪気さすら纏わせる。……食えない相手だ。
「────成る程。想定より、盲目でもなさそうだな?」
「お待たせ致しました」
二葉先輩との問答はほんの数分。
ティーポット一式と茶菓子をのせたトレイを両手に持った園陵先輩が席に戻ると、俺も二葉先輩もすぐに表情を切り替えた。
「あ、我の好物が」
「さっきの紅茶の仕返しです」
「ぐぬぬ……」
こんなかろやかな応酬も、さっきの会話を念頭に置くととても無警戒ではいられない。言葉選びには気を付けねばと、さらに外堀を固める。
さっき二葉先輩が王道を評するときに使った、「外面にも内面にも興味が無い」という発言。それは裏を返せば、上塗りされた表層だけで他人を見ていないという意味にも取れる。
俺も、気を付けねば。
好きなフリ……心を偽り周囲を騙す行為が想像以上に危ない橋を渡っているのだと、認識を改めよう。
ここ一ヶ月、あの食堂イベント以来、俺は自ら王道に会いに行ったり積極的に絡んだりしていない(仕事で忙しかったことが理由としては大きい)。
とりあえずは現状を維持して、必要以上の接触を避け、ボロを出さないよう徹する。
前途多難でしかないが……これも自身の平穏な学園生活のため。そのために嘘を重ねる。
巣食う罪悪感には、そっと蓋をかぶせた。
” みゃぅ “
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