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*  それから30分後。  生徒会寮一階・談話室に、俺とタツキ、それからほかの生徒会メンバーが集められた。  ペルシャ絨毯が敷かれたそこには、真紅や白のロココ調ソファが複数置かれ、洒落たランタン照明が柔らかく部屋を照らしている。  ここに全員を集めた目的は、子猫の今後についての緊急会議を開くため。  なお、問題の子猫は一番大きなテーブルの上、大きなバスケットの中、ブランケットに包まれて今もすよすよ眠っている。 「りっちゃん!」 「タッキー!」 「「小猫見つけたってほんと!?」」 「二人ともお静かに。そのこが起きてしまいます」 「「しー」」  双子は駆けつけるやいなや、猫が包まれたブランケットのまわりを好奇心いっぱいでうろちょろする。双子のテンションの高さにつられて、タツキも笑みを浮かべていた。  見ていい? と落ち着かない様子でケットの下を覗きたがっている。とりあえず、まだだめです、と言っておいた。  彼らは純粋に子猫との出会いを喜んでいるようだが、この件に関してもう少し慎重になるべきだと俺は思う。  というのも、この学園の敷地内で子猫が野放しにされているなんて、本来ありえないからだ。そして俺以外にも、子猫との遭遇に疑問を持ってる人間が二名ほど。 「たとえ猫でも学園のセキュリティから逃れられるたぁ思えねえが」 「正門は確か、月の変わり目にメンテナンスやってたでしょ。認証作動してないときに偶然入って来たんじゃないの?」 「それだと期間が開きすぎてる。『獣』の目撃情報が上がったのはここ数日前だ」  テーブルを囲むソファに向かい合って座り、難しい顔で見解を述べるのは会長とマツリ。  小猫をタツキが拾った経緯は勿論、ツバキ先輩から得た情報も小猫に関係がある可能性が高いと見て、ここにいる全員にすでに説明は終えている。  さて、この子猫との出会いには、偶然で片付けるには見過ごせない疑問が多々ある。 「外部からの侵入は考えられませんね。セキュリティの点でも、生態系の点でも」 「じゃあ誰かの飼い猫か?」 「一般生徒はペット厳禁だよー」 「ンな細けぇルール守ってるヤツいねえだろ」 「会長サマがそれを言ってどうするの」 「そもそも、首輪もないので飼い主がいるかどうかは断言できませんけどね」 「え」 「……捨て猫、か?」  この学園に野良猫が自力で侵入する可能性は限りなく低い。それに、たとえセキュリティに不具合があったとしても、こんな山奥に"この種"の猫は生息していない。  誰かが内緒で飼っていた飼い猫が逃げたにしても、首輪もなければ捜索届も出ていない。届け出がされていたらツバキ先輩も『獣』ではなく『飼い猫』だと言いきっていたはずだ。  一番考えられるのは、そう。捨て猫の可能性。  生徒か、教師または従業員か、ここと連携する業者などの中の誰かが、この猫を学園に捨て去った。そしてこいつはその日から今日まで、こんなに小さな身体で、広い学園の中をさ迷っていたのだとしたら。  ───きっと、心細かっただろうな。 「捨て猫かあ……」 「僕達で飼ってあげられないの……?」  双子やタツキも同じ心境に至ったのが、表情が悲しげに曇る。談話室の雰囲気も、心なしか重い。  しかし、会長と目配せを交わしたところ、考えていることは俺と同じようだった。  つまり、「一過性の同情心で、この猫を、ひとつのイノチをここで飼うには、リスクが高すぎる」と。  

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