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 話が終わり、思い思いに散っていく生徒たち。中には誰か誘ってあわよくば、と考えるヤツらも。マツリ達は集中砲火だなと思って眺めていれば、なんと三人(+玖珂くん)ともこっちに向かってきたではないか。  先生方を目指していた足が止まる。俺に釣られて紘野も止まる。 「リオちゃん達見学?」 「ええ。諸般の事情で」 「そっかぁ」 「残念……」 「「りっちゃんの分まで頑張るよ!」」 「はい、楽しんできて下さい」  とっても授業参観の気分。  双子ははしゃぐ気満々なのか水泳帽を真面目にかぶり…………ってその水鉄砲どこから取り出した。帽子か、そこに隠していたのか! 「じゃあ遊んでくる!」 「りっちゃんもプールサイドに近寄るときは気を付けてね? さもないと……」 「「バーン!!」」  打つ真似をして小走りでプールへ駆けてく二人に心を撃ち抜かれてしまった。きゅんときた。  頼むから滑って転ぶなよ俺ぁ心配だよ。  そういえばこの三人とは去年のこの時期知り合ってなかったし、クラスも別だったからなんだか新鮮だ。いつか競泳してみたいな。 「それでは、先生方に用事があるので。これで」 「ん! じゃあ泳いでくるよー。惚れても知らないからねー?」 「はいはい………あ、」  ピアス。  髪を結ったことでさらされた耳に揺れる、はずし忘れた複数の装飾品。  どんだけ急いでいたのかと、咄嗟に手を伸ばして、マツリが俺の指先を見据えたのがわかった。だから、不自然な位置で止まってしまった。  それでも何事もなかったようにまた動かして、ひとつふたつと外してやる。自分でもお節介かとは思ったが、本来自分で出来るはずのマツリも、ありがとーなんて言いながらされるがままだ。 「……けっこう、種類ありますね」 「なんなら一コあげよーか? それ」 「マツリが持つものだと、私では似合いませんよ」 「んー、そうかなー?」  左右で5つ。ピアス3つにカフが2つ。  大きな緋色の石がついたピアスが中でも一際目立つ。  見るたびに種類も組み合わせも変わっているから、相当数持っていることだろう。わりと蒐集癖があるのだと前に言っていた。 「これはどうしますか」 「リオちゃんが、預かってて」  マツリはにっと笑って、躊躇なくそう言った。  高価なものばかりだろうと思うと、紛失してはいけないという緊張と使命感が生まれる。掌の上のピアスたちを慎重に包み込んだ。  

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