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リウが潜水で水泳部顔負けの記録を叩き出したり(昔から泳ぎだけは得意なんだよなあいつ)、すかさず藤戸氏がそれを上回ったり、誰かが盗撮したとか水着が脱げたとかなんだとか、たかだか一コマの間にいくつかの話題やハプニングはあったものの、気付けば残り時間はあとわずか。
50分授業があっと言う間だった。
「紘野。もうそろそろ終わる」
「……ん」
隣に座る紘野がやっと終わったとばかりに首をぱきぱき鳴らす。
途中からだいぶ怪しかったけど、最後まで俺の暇つぶしのお喋りに付き合ってくれた紘野くんに拍手。ぼっち見学じゃなくて良かった。一人だったら相当暇だった。
体力が尽きてきた生徒がプールから出て、ぱらぱらと同じ目線に立つ生徒が増えてくる。
チラチラこちらを窺う生徒も多いが、紘野がお隣にいらっしゃるので近付いてくることはなかろう。さっすが現ヤンオーラ。
遠目に黒いタオルをかぶったマツリが頭を振って水気を飛ばして玖珂くんに注意されてる姿が目に入る。しかし双子も真似をしたのでこれにはさすがの玖珂くんもたじたじだ。
そう、微笑ましいな、と目を細めていたら。
ワッ、と歓声が聞こえたのは、飛び込み台があるプールの周辺。
本日何回目かの歓声に、挑戦者は誰だろうと顔をあげて、目を疑った。
「あれって、棋前 くん?」
「頑張ってー!」
クラスメートA、だ。まさか。
最後の挑戦者に、周りの生徒は応援ムードである。今までより一番大きな歓声が轟き、指笛や手拍子、しまいには本人そっちのけでカウントまで始まった。
「10!」「9!」「8!」と数が小さくなるほど上がるボルテージ。おいおい、本人そっちのけでカウントダウンかよ。
そりゃあそこから飛び込めれば度胸を評価されるし、何より目立つ。後者が理由で俺はやったことないけれど、Aも決して目立ちたがりではないはずだ。いったい何故。
「……CDEか!」
「どうした」
「不穏!」
紘野におざなりに返事をし、動向を注視する。
プールサイドに固まっている先ほどの生徒CDE。そして堅い表情で飛び込み台に立つA。
嫌な予感しかしない。
しかしもうあそこに立てば後にはひけないのか、Aは大きく深呼吸をした。……でも、がちがちだ。
古賀やインストラクターが異変に気付いたが、もう遅い。
「────A!」
ドボン、と。
高い水しぶきと大きな音を響かせて、Aの身体は一直線に水中へと沈んでいった。
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