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「おおおお!!」 「すごーい!」 「ナイスファイトーっ!!」  歓声は最高潮。  しかし多くは集団の雰囲気に呑まれ、大多数の生徒はAがなかなか浮上してこないことに気付かない。そのときにはもう、俺は走り出していた。 「すみませっ、そこ通してください……!」  こんなときでさえ敬語を使うのは面倒だと思いつつ、走りながらベルトを外して投げ捨てる。  ちなみにベストは紘野に押し付けてきた。見学でも裸足だからこちらはそのままで心配ない。  古賀や藤戸氏、指導員数名が危険を察して近付いてきたが、距離からして俺の方が近い。  飛び込んでからどのくらいたったか、さすがにまだ息は続いていると願うが、あの緊張した面もちを見たあとではどうにも。  俺がプールサイドへ近付くにつれ、ザワリと歓声が動く。一番驚いていたのはやはりCDE。飛び込み台に立ち、ネクタイに手をかけた。 「光様……?」 「どうなさったのですか?」 「支倉ー! ちょっと待て!!」  ネクタイをシュル、と解く音がやけに大きく響いた。  そのまま濡れた床に落とす。ネクタイの一本くらいくれてやろう。古賀の声はひとまず無視だ。俺の視線の先が水中だとわかり、固唾を飲んで見守っていた生徒がAの異変に気づいたところで。  すぅ、と深く息を吸って。  ためらうことなく、水の中へ飛び込んだ。 「支倉! お前柔軟していないだろう!!」  ……こ、こまけえこたぁいいんだよ。  ちょっと不安になった。でももう引きかえせないのが現状だ。音も聞こえなくなったが、直に追いついてくれるだろう。  深い水底で、もがく姿を見つける。  しかし溺れている人を助けるにはコツがいる。  まず、相手に救助の存在を気取らせないことだ。向こうはパニック状態、そんな中で手を差し伸べれば、向こうが引っ張る力でさらに深く沈むことは目に見えている。  ここがプール程度の深さで良かった。 「────……?!」  後ろから羽交い締めするように持ち上げ、立ち泳ぎの要領で上へ上へと昇る。身体が相当強張っているようだ。これでは浮くものも浮かない。  Aは救助を察したのか、暴れることをやめて大人しく収まった。 「……ッ、は…!!」  水面から浮上し、大きく息を吸う。  Aは俺の腕の中でぐったりだ。すでに藤戸氏が傍に寄ってきていて、何かを言う前にAを引き取ってくれた。  助かった。さすがに自分とそう変わらない身長の相手をプールから引き上げるには、体力と腕力に不安があったので。  

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