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 雪景色頼(ましろより)。二年Aクラス。  それが、俺の親衛隊隊長のフルネームだ。  あれは今年の一月頭、まだ親衛隊への苦手意識が色濃かった頃の初対面時、頼が新しい隊長になったからと俺に挨拶しに来たとき、失礼ながらも仲良くなる気がなかったので名字で呼ぼうとした。  しかし結果はこの通り、名字の読み方を外しまくったあげく(ずっとユキゲシキくんだと思い込んでいた)下の名前で呼ぶ方向に落ち着きまして。  最初は自分が親衛隊を持つことに戸惑いもあったものの、実際会ってみると話しやすく有能で、今では親しみを込めて頼と呼んでいる。  頼の方ももっと崩した言葉使いでいい、何なら名前に様もいらない、と度々言っているのだけれど、どうにも治らないらしく、まだまだ練習が必要である。  毎月10日前後は、月イチで開かれる個人の親衛隊会議の簡易報告会。  ただ、現在彼はちょっと不機嫌というか、拗ねてらっしゃるみたいなので、正直言うと逃げ出したい。 「話は変わりますが……一昨日のプールの件、聞きました」 「……耳が早いですね」 「そこは、まあ、写真部が賑わってたもんで。購入リストに載っている生徒の分は貴方様が直接回収したみたいだけど、窃取、裏取引、……それから写真使ってヌいたクズ共には、もう二度とそんな気が微塵も起きないよう俺がこの手で直接処罰を与えておきました」 「……」  たしかに、リスト外の回収漏れがいつの間にかなくなってたことに疑問はあったが。なるほどお前か。  つーか二度とそんな気って……お前どんな処罰くだしたの? 淡々とした敬語がかえって怖い。 「あー……ほどほどに、お願いします」 「それはこっちの台詞です。そもそも、何故あのようなずぶ濡れのお姿に? それ以前にベストやネクタイはどうしたんです。ご自分が潔癖で禁欲的だと周囲から認識されていることくらいご存知でしょう? だというのに、あのようなお姿を晒して、あげく写真におさめられるなんて。あんなの別に俺じゃなくったって買い取りますよ……!」  突然語調を強めるのだから、ビクッと思わず肩を跳ねさせてしまった。頼さんちょっと声が大きい。  防音だし誰も来ないからいいけど感覚を失った足に響きますやめろ下さい。 「何か言いたいことは」 「え、あ……ほ、ほら、敬語がですね……」  話を逸らそうとダメもとで頑張ったらキッと睨まれた。ごめんなさい。  といっても基本的に優しい相手なのでさほど怖くない。そういったら多分まじめに聞けって怒られるから、言わないけど。  

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