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 最後に園陵先輩からの近況報告を聞いて、無事1つめの議題を閉じる。  会議のたびに顔を合わせる『役職持ち』たちはだいたいこんな感じ。  露骨に緊張しているのが伊勢さんと矢島。  冷静・穏やかだが基本的に一歩引いているのがクラン先輩。  普段とあまり変わらないと思いきや実はいつもより意識的に声を張っている佐々部さん。  唯一、通常運転でボケ倒すのが二葉先輩。  そして一番緊張しているのは他でもないこの俺だ。顔には出さないようにしてるけども。  おや、誰かを忘れているような……気のせいかな? 「報告は以上ですね。では、次の議題に移りま」 「待てコラ。オレを飛ばしてんのはワザとか? 気付いてねェわけないよな、リオ」  赤髪の人にストップをかけられる。  え、寮長?? 知らない単語ですね……。 「すっとぼけた顔すんな。バレバレなんだよテメェはァ」 「すみません存在感が無かったもので。ついうっかり」 「冗談はよせよ……副会長ともあろう人間が、うっかり参加者の人数を数え忘れるような低次元の無能(・・)なわけがねェだろう」 「……ええ勿論、この場に参加されている有益(・・)な方のことはしっかり頭に入っていますので、どうぞご心配なく」 「コホン」  園陵先輩の咳払いで我に返る。あぶない、脱線しかけた。  醜い人間のくだらない諍いごときに女神の喉を酷使させてしまうとは、なんと罪深い。きっと万死に値する。  しかし慈悲深き女神は目が合った俺を励ますようにこりと微笑む。神。  大丈夫、まだ頑張れる気がする。 「……ここにいる何人かにはすでに話したが、今月の頭に野生の小動物の目撃情報があがっている。最近は見かけなくなったそうだが、発見され次第、オレか風紀に連絡するように呼び掛けを頼む」  会長とこっそりアイコンタクトを取る。  ノアのことだ。  ここで議題に上げられるだろうとは予想していたが、叶うならやっぱりツバキ先輩の順番は飛ばしてしまいたかった。  生徒会と風紀を除いた『役職持ち』たちの一部は初耳だったらしく、「小動物」の話題に何人かが食いつく。  「たぬき?」「きつね?」「ねこ?」「こあら?」と地味にしりとりが始まりかけて二葉先輩がウズウズし出したので、さっさと話題を切り上げることとしよう。 「私たちの寮付近でも、役員がここ最近何度か姿を見かけました。十分注意しておくようにと、役員には伝えてあります」 「見たのは何日前だ?」 「ニ、三日は前だったかなと」 「……そうか。生徒会寮近辺を巣穴にしてんのかもなァ」  まあ、近辺どころか、寮内の談話室なんだけども。  「獣注意」の案件はこの場でまた取り上げられるとわかっていたので、会長とは事前に打ち合わせ済みだ。  会長曰く、「報告の場は後日設ける。だから今はまだ、お前お得意の素知らぬ態度を徹しろ」と。余計な一言はさておいても、何か他に考えがあるみたいなので素直に従うことにした。  とりあえずここではまだ保護していない(てい)を装い、疑問・確証を持たせるような発言は避ける。  しらばっくれるのはあまりいい心地がしないが、ここで報告すればどの道ノアは取り上げられてしまう。それは避けたい。  一度飼うと決めたのだ。  本当の親猫が相手でもない限り、親権はそう簡単には譲ってはやらない。  

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