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「生徒会さえ平常通りに振る舞えば、連動して親衛隊も大人しくなる。生徒会以外の親衛隊なら、風紀で対処できる程度の規模だ」
「……しかし、」
「本当に、あの一年の為を想うなら、納得してもらえるはずだが?」
反論はするなよ、と声なき声が俺の反論を封じる。お前にとっても悪い話ではないだろう、とも。
悪い話じゃない。それはそうだ。
何せ先輩は知っている。俺の、王道への好意が嘘だということを。それでも、スキなふりをし続けてることを。
だから、生徒会が王道と関わることを風紀委員長の権限で潰した上で、「あの一年を想うなら」と、身を引く理由さえも用意してくれている。
前者はともかく、後者は、生徒会を嫌う風紀の人間からすればそこまで考慮する必要はなかっただろうに。
つまりは、この代替案には、俺へのフォローが含まれている。
しかもかなりの、割合で。
「…………」
周りにはバレない程度の時間、両の瞼を伏せ礼を伝える。
さっきは人の提案にボロクソ鞭を打っておいて、ここで飴を与えるとは。もう嫌だこの先輩。すごくありがたいけど、すごく悔しい。
そしてすごく、申し訳ない。
「そ、そしたら、親衛隊くんたちは、通常運行に戻る……んだよね?」
「サダオくんだって今後はイジメられずに済むんじゃないかい?」
「完全に元通りたァいかねェだろうが、ある程度の問題は片付くんじゃねェの」
上から伊勢さん、クラン先輩、ツバキ先輩。他の会議の参加者も、妙案だとばかりに頷く。我関せずなのは回転椅子の上でくるくる遊ぶ二葉先輩くらいで、ほとんどが風紀委員長に賛同派。多数決の原則からしても、もはや決定事項も同然。
利点があるのは親衛隊やサダオ(多分王道のこと)だけじゃない。
生徒会も、『一人の未確認転入生に骨抜きにされたお手軽集団』から、『生徒の快適な学園生活のために身を引いた方々』だと肯定的に受け止められるのではないかと思う。
この案を飲んだことで困るのは、親衛隊の暴走に便乗する生徒か、生徒会を批判したい人間か、はたまた王道萌えを搾取したい一部の人間だけ。
生徒会が自制さえすれば、大方の問題が丸く収まる。
誰がどう聞いても、最善策。
ただ。
例外が、ひとりいた。
それだけの話。
「…────却下」
王道だの、親衛隊だの以前に。
風紀委員長から持ち出された提案という名の『命令』を、生徒の最高権力たる生徒会の会長がそう簡単に了承できるはずもないのだから。
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