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 だがしかし、膠着状態が続くようならそろそろ止めるべきだ。伊勢さんと矢島が極度の緊張状態で死にそう。  何より、俺には司会進行の使命がある。 「…………話を遮るようで申し訳ありませんが、お二人共。このままでは平行線です」  この状態で会議を続けたところで、生徒会と風紀がうまく合意にこぎつけられる気がしない。ここは一度解散した方が吉。  それに、この代替案は一度持ち帰って他の生徒会メンバーにも意見を求める必要がある。タツキなんかは元々王道を受け入れていない人間なので反対することはないだろうが、問題は双子とマツリ。  ついこの前、王道と仲良く「おともだち」している双子の様子を見た手前、交流を一切絶てとのお達しは告げにくいものがある。  マツリの反応に至っては予想ができない。  何より生徒会の代表である会長が頑として反対の姿勢なのだ。言い分も私事ではなく、筋が通っている。ここで決着は着けられまい。 「どちらにせよ、生徒会の今後の行動については他の役員とも話し合わねばなりません。この場は一度───」  解散して、後ほど報告致します。  そう続くはずだったのに、それを遮ったのはメールの受信を知らせるマナーモードのバイブレーション。  俺の携帯だけではない。一斉に四ヵ所。  目を丸くした俺と同様、小さく反応を示したのが三人。俺と会長、そして風紀の二人。  嫌な予感に駆られ、ほぼ同時に携帯を取り出した生徒会と風紀の様子を、他の『役職持ち』は静かに見守る。 『緊急報告  17:52 制裁現場目撃情報  生徒会会長様の親衛隊      :隊員5名・野球部数名  制裁対象:佐久間涙    場所:第二体育倉庫       送信元:親衛隊総括隊長』  ……別に、珍しいことじゃない。  学園で確かな立場に身を置く生徒が放課後一ヵ所に集められる月例会議の時間は───…問題を起こしたい生徒にとって、絶好のタイミングなのだから。 「……間が悪いにもほどがある」 「ほんとですよもう……」  溜息混じりに呟く会長に同意する。  騒ぎの中心が会長の親衛隊、というのがまた痛い。  リアルタイムで審議してる議題に問題の方から飛び込んでこなくてもよかろうに。  野球部数名を引き連れてるとなると、リンチか、行為の強要か。裏で金銭が動いているのか、それとも別の賄賂か。  風紀二人の顔を直視できない。  志紀本先輩とか絶対、呆れた顔してると思う。 「お前も来い」 「……後始末程度の働きしかしませんからね」 「十分だ」  席を立つ会長に耳打ちされ、ゆっくり頷く。  騒ぎを起こしたのは会長の親衛隊だから尻拭いに気は進まないけれど、生徒会の無責任な行動をこの場で指摘されたあとで生徒会の一員である俺が他人のフリを決め込むのは、立場的にもよろしくないだろう。  好きな言葉ではないが、連帯責任。  それに、会長が席を外して俺だけがこの場に残ったところで、圧倒的に分が悪い。丸め込まれる未来しかない。  そのあたりを見越した上で俺に来いと指示した『会長命令』は、悔しいが、正直、ありがたいのだ。 「悪いが抜ける」 「こちらの都合で申し訳ありません。……先ほどの提案については、役員とも話し合いを試みますので、回答には時間を下さい」  会長の横で深々と頭を下げ、扉に向かう会長の半歩後ろをついて歩く。  その、直後。 「───何故ソイツまで連れて行く?」  その声に従うかがごとく、根でも生えたかのように、己の足の動きが止まった。  

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