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 上半期の生徒会業務の集大成となる『生徒総会』は、なんとか無事に閉会に漕ぎ着けた。  生徒会役員にとっての『生徒総会』とは実のところ、任期の下半期を継続できるか否かの重要な折り返し地点である。  過去、"使えない"と判断された役員はこの場をもって断罪(リコール)され、大衆の面前で無能の判を押されていた。  去年がまさにそうだったので、俺たち役員はそれはもう必死だ。  【王道事変】が起きて以来、一部の一般生徒からの信頼が揺らいだままなことは確かだが、『生徒総会』で審議されるのは生活態度ではなく仕事の能力。  だからこそ、今日この本番までに何とか仕事を完璧に仕上げ、質疑応答の事前練習と話し合いを重ね、なんとか乗り切ることができた。  そして今……───『生徒総会』の夜は、例年立食パーティーが開かれる。  名目上はインターハイに出場する生徒への激励と祝杯だが、実際のところは夜間の自由行動を制限される寮生たちへのちょっとしたガス抜きも兼ねているんだと思う。 「準備できたか」 「入るよー」 「……」  ノアと遊んでいたところ、俺と双子の身支度が整うまで控え室の前で待機していた三人が、再び部屋に戻ってきた。  どの顔にもほんのりと疲労が見える。  生徒総会の準備はもちろん、それと同時進行で立食パーティーのセッティングと、ここ最近は何かと多忙だったのだ。  寝てないし寝かさなかった。  それを表に出さないようにと、全員が気を引き締める。  ” なーう “  がしかし、俺の腕の中からひょこりと頭だけを現して会長たちを出迎えるノアの姿に、ふにゃりと、全員の肩の力が抜けてしまった。  この反応から分かるとおり、生徒会は皆、ノアに骨抜きにされつつある。 「名残惜しいけど……」 「そろそろ時間……」 「「僕たちとタッキーは先に会場入りするね!」」 「行っ……てくる……」  ノアとのふれあいを惜しむ双子とわんこを会場へと送り出せば、控え室には俺と会長とマツリ(+ノア)だけが残された。  一般生徒はすでに会場にて待機している。とても行きたくない。本音言うととっても行きたくない。  ” にぃ、にゃぁ “ 「いつもより、よく鳴くな」  ” みぃぃ “ 「いつもと様相が違うせいか、落ち着かないみたいで」 「あー……ペットってそういうの、敏感だからね」  ちなみに何故、この場にノアがいるかというと、今夜はノアの御披露目が目的だったりする。  生徒会寮でなら自由に飼っていいと理事長からの認可が先日下りたので、手っ取り早く生徒会の猫だと広めるために連れてきた。  だが、立食パーティという食事と社交の場で動物を放し飼いにもできないので、バスケットで常に持ち運ぶことに。……何故か、俺が。  ただでさえ学園行事は良くも悪くも注目を受けるというのに、さらにノアとセットとなると見世物パンダになる予感しかしない。 「ゴミが人のようです……」 「リオちゃんそれ逆。いや逆でも言っちゃだァめ」 「おっと失敬」  内窓のドレープカーテンの隙間からちらりと見下ろしたパーティ会場にひしめく人、人、人。  あと数分もすればこの視線にさらされる自分の立場を呪いたい。  ここでいう"立場"とは、生徒会役員としてではなく…───学園でたった8名だけが冠する、『別名持ち』という意味合いで。  

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