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 くちでは物騒だが基本的に紳士的な頼さんは、バスケットの蓋を閉じてノアと東谷の対面を避けて下さっている。DQNは教育に悪いしな。  ということで解散解散。  取り巻きふたり、君たちは早く王道と合流して勝手にラブコメっていればいい。そして腐男子の餌食になればいい。  ここを立ち去ったあとはどこに行こう。俺のここでの仕事は新生徒会役員・ノアのアピールだから、もう少し連れ歩いた方がいいだろうか。 「それでは私はこれで。ルイによろしくとお伝えください」 「誰がテメェみたいな陰険野郎の頼みなんざ」  王道のことを気にかける副会長アピールをしつつ、話に区切りをつける。  ほらさ。ノアがいるからさ。  スキナヒトの食事中に動物連れて逢いに行くなんてそんなマナー違反できませんわーすごくざーんねーん。  そして俺の愛想笑いに対する元一匹狼の社交性のなさと言ったら。さすがぼっちコミュ症。陰険野郎? なにその熟語知らない。  頼むからそんなに睨むなよ。  お前が睨めば睨むほど斜め後ろのひとが怖い怖いこわい。 「やめろよ東谷。相手は先輩だぞ」 「うぜぇ。今度はイイコチャン気取りかよ、槻」 「……。副会長さん、東谷が失礼なことばかり言ってすみません。後で言って聞かせますから。佐久間が」  東谷、これに舌打ちひとつで黙る。なんとまあ扱いやすいこと。  実は爽やか×元一匹狼の可能性もなきにもしもあらずなのでは? と邪推してしまうのは俺が腐男子の思考に毒されているからだろうか。  いや違う、俺は単に某腐男子の横暴から身を守るためにそういう勘や思考回路が発達しただけであって、男同士の絡みそのものに萌えを感じるわけではない。断じて無い。  王道とゆかいな仲間たちの関係性を客観的に見たところ、駒井ちゃんが王道の御守りなら、槻くんは東谷の監視役ってとこかな?  まあいいんじゃないの。仲良くおやり。  さて、邪魔者は大人しく退散しましょうかね。 「では、この後もたのしんで」 「───やだ、どうして《蒼薇》様がこんなところに……!?」  くださいね、と言いかけて、固まる。  《蒼薇》って、ええ?  あいつ、人混み嫌いなはずじゃ……?  何かの聞き間違いかと振り返った先、その男は確かにこちらへと歩みを寄せていた。  膨らみはじめた上弦の月とシャンデリアの明かりに絶妙に照らされ、異様な存在感を放つ美男子。闇に溶けるような黒の髪。光をすべて吸い込む黒の眦。冷たさと気怠げな色気を纏う、漆黒。  相変わらず、夜が似合う。 「また何の気まぐれですか……」 「……」 「こんばんは、紘野くん」  出たな、一匹狼の総本山。  

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