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とてとて近づいてきたかと思えば、俺の足元へごろにゃんとすり寄ってくる。あまりの愛らしさに鼓動がトゥンクと跳ねた。
ホットミルクティーとブラックコーヒーをトレイに載せ、慎重にテーブルに置いてからソファに腰掛けると、遠慮なく俺の膝へと飛び乗ってくる。
あんまりかわいいので条件反射でその頭を撫でた。人間様を座椅子代わりとは、この猫やりおる。
続いて隣に足を組んで座った会長が、この光景に小さく笑みを零した。
「……最初は反対してたくせに、結局は一番可愛がってるよな。そいつもお前に一番懐いてるし」
そ れ は 猫の世話をまともにできない役員ばかりがいるせいだ。
双子は構い倒し、タツキは一緒に昼寝、会長にいたっては放任主義。たまぁにマツリが手伝ってくれるけど、世話係は基本的に俺と守衛さんだけ。
といっても、ノアからすれば俺は「餌をくれる人」程度の認識だろうけど。
“ なあん ”
「「あ、」」
そんな俺の思考を読んだかのように膝から軽やかに降りたノアは、会長の膝へぽんぽんとその前脚をかけた。
ふ、フラれた……。
やはり顔か。会長の方が顔が良いと言いたいのか。こんちくしょう羨ましい。
しかし猫からのアプローチを受けた会長本人は、ただ訝しげにノアを見下ろしている。
「何故こっちに来る?」
「……(美形が)好きだからじゃないですか?」
「なんだそれ」
「せっかくですから撫でてあげて下さい」
「どこを」
「……。今まで猫に触ったことは?」
「猫どころか、動物を間近で見るのはこいつが初めてだ」
「………」
18年も生きておきながら遊園施設を初体験だと言っていた、歓迎祭初日を思い出す。
そういえばノアを飼うことに関しても、「好きにしろ」と、会長にしては珍しく周りに決定権に任せていた。
……触ってみたい、なんて、思ったりしないのだろうか。
「猫によって異なりますけど……顎の下、とか、でしょうか」
「顎下」
俺に言われるがまま、すりすり、ノアの顎下を小刻みに擽る会長の指。
さすがはテクニシャン。次第にノアの顔がゴキゲンになり、会長の膝の上に身を預ける。あとはこの無節操のこと。相手のいいトコを探し当てるなど造作もないだろう。
気付けばノアはこの上なく満足そうに喉をごろごろと鳴らしていた。
「……可愛いなこいつ」
だろ? そうだろ?
と、何故か俺が誇らしげになる。
まあ、守衛さんの次に面倒見てるの俺だし? このふわっふわの毛並みも俺が整えましたからね。愛着もそら沸きますよ。
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