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ウワサの学園 1

 みーん、みぃいいん。  この暑さにうっかり夏だと早とちったセミが耳障りな音を発する。  まだ夏本番には早い段階で短い命を削られることになるとは虚しかろう、悔しかろう。  ちなみに俺の三大嫌いなものは1にホラー、2に虫、3に腐男子だ。  苦手なものがホラーで虫と聞くと男のくせにと馬鹿にする人間がいるので他人に教えたこともないが、生理的に受けつけない。  まずフォルムから無理。昆虫特有のわさわさした脚が無理。集団で生活してるやつとかもっと無理。人間に危害加えるやつは豆腐の角で頭打って死ねばいい。  その点、徹底した殺虫方針の学園が唯一安息の場だ。  維持費も人件費も馬鹿みたいに高額な学園でも、そこだけは大変ありがたい。  それなのに何故今現在セミの声が喧しいほどきこえているのかというと、要するに俺の現在地は学園のお外なのだ。  学園の外、それはつまり 女 子 が い る!!! 「わ、かっこいー……」 「ほんと、キレイな男の人だね……」 「こっち見てくれないかな……」 「ねね、誰か話しかけてきてよっ」 「無理無理、相手にされないって!」 「きゃあっ、今、目が合ったかも!」  ねえ聞いた? 聞きました?? かっこいいですって!  ありがとう、本当にありがとう! やっぱり女の子っていいよな!! 「わ、踏まれたい……」 「ほんと、ふつくしい女王様だね……」 「夜の組み手指南してくれねえかな……」 「なな、誰か盗撮してこいよっ」 「無理無理、その場でヌけるって!」 「きゃあっ、今、蔑まれたかも!」  やめろ……やめろ…………。  ガチムチ集団の恍惚とした顔なんざ視界の暴力なんだよクソ柔道部どもが。筋肉寄越せ。  なお、これは柔道部控え室に俺が挨拶しに赴いたときの反応である。  あんたら重ッッッ々承知だとは思うけど、学園外(そと)ではお利口にしてろよ? 身内・同類だらけの学園内とはわけが違うんだからな?? 「……あっちぃ、」  ミストタイプの持ち運び型扇風機を回し、少しでも体の熱を冷ます。  さすが盆地、学園とは気温も湿度も桁違いだ。  ここは身体に纏わりつくような熱気がこもる武道館内。  6月の下旬でこれだ。本格的に夏が始まれば地獄のような環境になるのだろう。  湿度も気温も高い快晴の午前中。  周りの観客や保護者たちはタオルや団扇を片手に談笑中。  学園にはまず居ない、行儀の悪い男子中高生やおっさん、世間話に夢中で通行の邪魔になってるオバサン達。久々の庶民感がなんだか懐かしい。  本日、学園からバスや電車を乗り継いで約一時間のところにある、郊外の武道館にて。インターハイ予選───高等学校総合体育大会予選・柔道競技大会団体戦の県代表決定戦が行われる。  

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