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 早いところではすでに5月から始まっていたインターハイ予選も着々と結果を出し、我が学園も複数の部活動が全国行きの切符を手にした。  王道の転入に伴い荒れていた学校生活の中で、好成績を残すことができたのはさすがとしか言いようがない。  一方、柔道部は設備の不具合による延期のため、他の運動部とはちょっと遅れた本日、県大会が執り行われる。 「あの制服って……まさか、ウワサの…?」 「え、あの都市伝説の?」 「ウワサって?」 「知らないの? 月城学園!」 「イケメンばかりが集まる謎の超エリート男子校のことだよ!」  噂の、ね。  学園のサッカー部やバスケ部が全国でも優勝候補に数えられるので、学園の名は外部にもそこそこ知られている。  さらに選手や応援に参じた生徒の顔面偏差値の高さが話題を呼び、ミーハーから熱狂的なファンなどが現れたり、取材を申し込まれるほど。  ただ、理事長の方針でメディアへの露出や学園への取材は一切禁止。未来の国を支える御子息様たちの高校生活は堅く守られている。  下手な素人が踏み込んだところで、国家レベルの隠蔽工作により見えない壁に阻まれるだけだ。  その反動もあって、月城学園はまことしやかに『ナゾに包まれた高校』だと囁かれているらしい。 「うわあわあ、ほんとに応援に来てくださったのですかあっ!!!?」 「こんにちは、篠崎くん」 「こっ、こん、にち、はっ」 「調子はどうですか」 「SAN値が!! ピンチ!!!」  とたとたとた、とフリスビーを追いかける中型犬のようなテンションでこちらに駆けてくるのは、ぶかぶかの柔道部ジャージを着た篠崎(しのさき)カズマくん。  両手いっぱいに抱えられたスポドリやタオルが彼の腕のなかで危なっかしく揺れる。  今日、俺が馴染みのない柔道部の試合観戦に来たのも、彼に誘われたからだった。  正確には歓迎祭でペアだったタツキが橋渡しをしてくれた。タツキについてはあいにく家の用事があるとかで断念したそう。  早いもので歓迎祭から四週間近く。あれ以降特に交流のなかった篠崎くんの様子もそろそろ気になっていたし、久々に外に出かけるのもいい気分転換になるかなと、こうして誘いに応じたのである。 「応援してますね」 「っっっス!! がんばります!!」  まもなく準々決勝が始まる。  なんと篠崎くん、次鋒(2番手)として初出場を果たすそうな。  元気に答えて駆け出した発展途中の背中は、三歩も行かないうちに転倒した。見ているこっちが緊張してきた。  

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