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「生徒会の方々が属しているチームに何が起きているのか、教えてください」。
ストレートにそう尋ねると、田中くん(仮)は一秒も間を置かずその質問に答えてくれた。
「あるところに、一人の族潰しがいました」
「はあ……」
「その族潰しは、とあるチームと大変仲良くしておりました」
「……とあるチーム?」
「通称"ヘビ"って名前のチームがあるんだ。……その"ヘビ"の人間にとって族潰しはすごく大事な存在でした。しかしある日、その族潰しはぱたりと姿を見せなくなったそうです」
「……」
「その理由を探ったチームの人間は、すぐに情報を突き止めました。───どうやらその族潰しは全寮制のツキシロ学園に転入したために、自由に外を出歩けなくなったそうなのです。これが5月のこと」
「5月」という時期外れに、「月城学園への転入」を果たした、「族潰し」。
だめだ、もうすでに頭がいたい。
「ここで可能性がひとつ。学園には《黎》という、"ヘビ"にとって目の上のたんこぶといってもいいチームがいる」
「まさか……」
「そいつらが"自分らの姫"から自由を奪っているのではないかと考えた"ヘビ"は、矛先を《黎》に向けました」
まてまてまて、ちょっと待ってほしい。
それはどう考えても、逆恨みってやつではないですか。
「どうしてそうなるんですか……山奥の全寮制なんだから、そう頻繁に外出できるわけがないでしょう……」
「普通に考えればそうなんだろうけどね。まあでも"ヘビ"には頭オカシイやつらが多いから、結果、《黎》の連中が手当たり次第に喧嘩を売られてる上に一般人にまで被害が及んで、《黎》側が早々に"ヘビ"側に決戦を申し込んだらしい。たぶん近いうちに……オニーサン?? 大丈夫?」
あンのクソ会長……ひとっっっことも聞いてねえぞ、そんな話……!!
怒りのあまり相槌する余裕さえ失った俺の異変に気づいた田中くん(仮)が気遣わしげに俺の様子を案じる。
実はその決戦とやらに召集されているんです、なんてまさか言えるはずもないので、「そういえば先月転入生が来たことを思い出して……」と適当に誤魔化しておいた。
動揺が大きすぎて、ひとまず届いたクレームブリュレをつついてそれとなく間を置かせる。混乱中の脳には糖分が最適だ。
それに、ここにきて浮上した可能性がひとつ。
「田中さんは随分と情報通なのですね。……無名チームの下っ端と仰るわりには」
「好奇心と野次馬根性だけは旺盛だからね。そこはうちの総長に似たのかも」
にっこりと浮かべられた笑顔に、嘘偽りは無さそうだった。
しかし第六感がざわりと騒ぐ。
信用してはならないと。
目の前にいる彼がまさに狡猾な敵 である可能性だって、決してゼロではないのだから。
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