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*  そうして時は過ぎ、明くる日の土曜、現在18時過ぎ。  夜更かししても大丈夫なようにと、昼間はたっぷりと寝た。平日の疲れも取れ、目も頭も冴え渡っている。  さて、そろそろ準備を始めるとしよう。  空腹で集中力を落とさないようにと昼間のうちに作ったサラダパスタを軽めに食べて、シャワーを浴びて。  それからウォークインクローゼットから細身のパンツと暗めのトップス、それから適当なジャケットを選んで着替える。  持ち物は腕時計と、会長から皆に配られた携帯。用途は連絡手段のみで、ちなみにガラケーだ。  そして紘野から借りたパーカーのみ。他にはない。  アクセや装飾は喧嘩の邪魔。財布は必要ないから邪魔。私物の携帯は個人情報の塊だから持ち歩くなんて言語道断。  いくら周りの人間が強くて偉いからといって油断などしない。用心するに越したことはない。  最後に履き慣れた靴を選ぶ。  服に合うのも重要だけど、それ以上に、別に汚したところで俺への精神的ダメージが少ないやつ。トントン、と数度爪先で床を蹴って靴を履き、玄関を出る。  オートロックの音を背中で聞きながら、ゆっくりとした歩調で談話室へと向かった。  “ にゃん ” 「ノアだけ、ですか」  集合場所の談話室にはやはり俺が一番乗りだった。比較的時間にルーズな役員ばかりだから仕方あるまい。  両開きの扉を開けた音に反応したのか、遊び道具の洞窟の中からひょこっと顔を出し、ひくひくと耳を揺らすノア氏。  餌皿を見て、そして俺を見る。  はいはい、餌係のご登場ですよっと。  受け皿にミルクを注ぎながら、傍でお行儀良く待つノアの顎下を撫でた。  これから殺伐とした場所に向かう前の、ちょっとした癒しの時間だ。止められない止まらない。どうしてこんなにもっふもふなの? 「……………にらめっこ?」  見つめあう俺とノアの様子にこてりと首を傾げるわんこに続き、続々と他の生徒会役員が談話室に集結。  全員が動きやすさを重視した軽装。  そしてチームの名を示すような、黒を基調としたファッション。 「───揃ったな。行くぞ」  次第に夜の気配が近づく19時前。  ブロンズ製の噴水が飾られた大理石のエントランスを抜け、寮の外へ。  守衛さんとノアに見送られながら、会長が手配した黒塗りのやけに長い車に乗り込み、学園を後にした。  さてさてさて。夜は長い。  

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