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それはそうと、無駄に緊張してきた。
かれこれチームを辞めて約3ヶ月。幹部だったのも、1月頭から3月末までの短期間。
これから《黎》のメンバー及び傘下のチームと対面するとのことなのだが、やべえ、こここ心の準備がまだ出来てない。
ああでも、彼らは俺のことなんぞとっくに忘れてるかも。はたまた、チームを抜けた人間が今更何しに来た、と敵意を向けられる可能性も。
VIPルームを出て下のフロアへ降りる御一行の先頭を歩く会長の袖を引き、こそりと耳打ちする。
「会長。私が今夜呼ばれていることは、幹部以外の人間には内密にしておいてくれませんか?」
「ああ。任せておけ」
やけにすんなり頷かれたことを、俺はもっと疑うべきだったと後に知る。
ひとまず無駄にゴージャスな階段を降りた後は彼らとは別行動。
身を隠す場所が少なかったため泣く泣くバーカウンターの下に隠れる。そんな俺に何故かわんこもついて来た。せま。
ざわり、ざわり。
総長と幹部の登場にざわめきがこだまするフロア内。そこに、すべて無に返す低い声が落とされる。
「────静かに」
その一言で大人しくなる彼らは完全に調教されている。
《黎》のなかにも数人ほど信頼できる学園生がいるのは確かだけれど、ほとんどは学園外の人間のハズなんだが、この恭順ぶりは一体どういうことなの……?
「最初に詫びる。知っての通り、今回の発端は《白蛇》が勝手に俺達幹部を恨んで勝手に始めた喧嘩だ。本来、お前らが参加してくれる義理はない」
そんなこと言わずに! どこまでもついていきます! という忠犬野次も、会長が片手で制せば途端に止む。
「かと言ってテメェらもやられっ放しじゃ性に合わねえだろう。───売られた喧嘩は買う」
口振りからいって、彼らへの説明はすでに済ませてあるのだろう。それならこっちにも早く言えってんだ。嫌がらせか。
「蹴散らすぜ、馬鹿共」。
会長の一声を合図に、うぇぇぇえぇい、などと明らかに酒か夜のテンションでハイになった返事が響く。
そんな中、何故か俺が身を潜めるバーカウンターの方へ歩み寄る会長。
……嫌な、予感。
すぐさま逃亡を企てたものの、後ろにいたタツキが俺の肩をがしっと捕まえ、会長になんなく腕を掴まれてしまった。
待って、ニ対一なんて聞いてない。
にやり。意地の悪い顔。
ちょ、ちょちょ、何企んでやがるあんた。
ざっけんな、今夜の俺は終始目立たず騒がずこっそりこそこそするって決めてんだからああくそ引っ張んじゃねええ……!
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