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「最近アイツ、学園で何してる? 友人だってんなら当然、知ってるよな?」
明日の天気でも尋ねるような、平坦な問い。これに答えないという選択肢はない。下手な抵抗はしない───けれど。
「………さあ? どうでしょう」
必ずしも1から10まで事実を伝える義理はない。
内心バクバクと脈打つ心臓を必死に宥めながらも、平然とした顔を心がけてしらばっくれる。対して、相手は捕食者の眼を楽しそうにゆるく細めた。
「答えらんねえんだ? ”友人”なのに」
「”友人”だからこそ、です」
第一、この人のことを本当に紘野の仲間だと信じていいのか、まだ俺の中では疑いがある。
不良の世界ではあいつもあちこちから恨みを買っているんだろうし、俺から紘野の弱味を聞き出すために近付いた可能性がまったくないとも言いきれない。
俺が我が身可愛さにあいつのことをあいつがいない場所で勝手に話して、万が一あいつの不利益に繋がるようなことがあれば……まだ、ここでボコられた方がずっとマシだ。
「じゃあ質問を変える。あんたは誰? 学園ではどんな立ち位置の人間?」
「……お答えする義務は、ございません」
紘野のことが言えないなら代わりに自分のことを答えろよ、的な空気だったがあえて読まずにここでも口を固く閉ざす。
初対面の相手に友人を差し出すほど薄情でもなければ、身代わりに我が身を明け渡すほどの潔さも持たない故。
「……学園を束ねる《黎》の幹部ともあろう人間達が、なんで《白蛇》のバカな挑発にバカ正直に乗ってやってんだ?」
「こちらの事情です」
「コレも、言えねえの?」
そろ、と見上げた表情、その唇はゆっくり、三日月状に弧を描いていた。
後ずさった分の距離を、再び詰められる。
相手の影によって俺の身体全部が月の光から覆い隠された。
本当に、大きい。
筋肉隆々ではないけれど、均整が取れた肉厚な体躯。身長差もそう。190近くはありそうだ。夜そのものに覆い被さられているような閉塞感と、とてつもない圧迫感。
そしてやはり印象的なのが、目の彩。
月光しか届かない中で、何故こうも映えるのだろう。
「さっきから黙秘一辺倒だな。なァ、分かってる?」
「……」
「聞き出そうと思えば方法なんて、いくらでもあるってコト」
ヒク、と片頬が引きつった。……明らかに、脅されている。
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