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「--ただ。ルイの話を聞く限り。一人だけ、おるらしいやんか。一般庶民の出の子ォが」
ほおん、なるほど。
人様のプライバシーを外部の人間にぺらっぺら話す輩なんぞ王道くらいしかいねえとは思っていたけれど、拉致だ誘拐だと騒ぎ立てておきながら、ちゃっかり王道とはすでに再会済みらしい。
ストレス発散と称して休みの夜は街に降りていたらしい王道のことだから、どうせ偶然こいつらに会ってぽろっと近況や学園の様子を話したんだろう。
生徒会のなかに庶民がいること、会長が王道にキスしたこと、さらにいえば《コウ》=副会長の等式。
いくら情報漏洩に厳しい学園といえど、内通者(王道)がいれば話は別だ。
こんな状況で身バレするくらいならクマちゃん先生にごまをすりすりして王道の外出許可を制限させときゃあ良かった。
「なァ、それ。キミのことなんやろ?」
「………」
そうですが何か? 一般庶民ですが何か?
まあ、俺が半々の確率で狙われる可能性があると言われた理由も、おそらく家柄という後ろ盾がないからだろうし。
もう半分の双子の場合は完全に見た目だろう。あの二人は見た目は小柄でも恐ろしいほどの勝負勘を持つというのに、なんとも考えが安直だ。
とりあえず近くの仲間にボス猿発見、と携帯で通達。
ちんたら文章を打つのではなく、9のボタンを連続で二度押すと自動でそういう内容のメールが一斉送信される仕組み。
画面を見ずとも手探りで操作できるのがガラケーの利点。
あのバ会長、ここまで見越してやがる。
「せやけどキミ、副会長サンやから。怪我はさせへんよ」
ずっと黙ったまま立ち尽くす俺の態度を、恐れをなしたからと解釈したのだろうか。
鳥肌が立つほどの猫撫で声。
しかし、笑みを結ぶわりに歪な唇は、ひどく嘲笑じみて。
「ルイが言うとった。あの学園の副会長って、一番抱きたい思われとる生徒がなんねやろ?」
「……」
「なあ、キミ、その地位に登りつめるためだけに、一体何人のオトコを咥え込んだん?」
…───あ゙ァ?
という、喉奥から漏れかかったガラの悪い声を飲み込んだ。
つまりは、何か。
俺が副会長になるためだけに、望んで、同性に脚を開いたとでも言いたいわけか。
確かにあのエスカレーター校で、高等部からぽっと出の庶民の生徒会入りは異例だと言われた。
生徒会や俺に反感を持つ一部の生徒にも、俺が枕営業的なことをしたのではと、そういう誤った認識を持つ人間もいる。
だが、勘違いもいいところだ。
身体を売ったくらいで入れるような組織なら、生徒会がここまで生徒に支持されるわけがない。
無論、彼らにそれをわざわざ説明してやる義理もないが。
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