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 そんな俺たちを前に、養護教諭は怪訝そうに小首をかしげる。 「何勘違いしてんだテメェら。オレはただ、副かいちょォが怪我してたらなんの口実も考えずにお医者さんゴッコができたんだがなァと、思っただけ───おっと、」 「それでも医者かお前」  会長の蹴りが飛ぶ。  それをひらりと避ける養護教諭。  畏まった自分が馬鹿らしくなるほど、いつも通りの彼らの応酬。 「仕方ねェだろォ? 相変わらず汚したくなる顔してンだもん、副かいちょォ」 「……こいつとだけは二人きりになるなよ」 「は、はい」 「別に取って食いやしねェって」 「説得力の欠片もねえぞ」 「なァ副かいちょォ」 「は、はい?」 「仕切りに話しかけんな。困ってんだろ」 「オレも若ェ子とお喋りしたいの」  なんてことない会話。度々投げかけられる冗談めかした軽口。  二人の気遣いが伝わる。  会長も、養護教諭も、俺が落ち込まないように、自分の失態を責めないように、自己嫌悪に浸る時間を極力与えないようにと、してくれている。  すう、と息を深く吸って、無理矢理にでも思考を切り替える。  相手に気を使われてまで凹んでもいられない。反省してますというアピールのようで尚更みっともない。  怪我の容態も分かったことだし、いつまでも長居はしてられない。きっと双子たちも心配して、寮で寝ずに帰りを待っていることだろう。怪我を負わせた責任として、俺の口から説明する必要がある。  養護教諭へ礼を述べ、深々と頭を下げた。 「私はこれで失礼します……何かあればお呼びつけ下さい」 「帰んのか? ベッドならたくさん空いてんのによォ」 「部屋のベッドで寝ます」 「寮まで送ってってやろォか。強制的に送り狼コースだケド」 「犬科なら間に合ってます」 「また来いよ。今度は一人で」 「しね繋」 「邪ァ魔すンなっての」  隙を見てするりと退出し、ゆっくりと閉めきる。  一人になった途端どっと押し寄せた安堵感に身体の力が抜けて、扉に寄りかかった。  はあーー……と長く息を吐く。  よかった、よかった。大した怪我じゃなくて、本当によかった。  でも、会長にはしばらく安静が必要だ。  あの俺様のことだから言っても聞きやしないだろうけど、利き腕の怪我だから多少なりとも日常生活に支障が出る。  でき得る限りのサポートはしよう。副会長としても、俺個人としても。  

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