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「っ、っ、ルイ……っ!」
「久しぶりだな!」
「会いたかった……!」
「オレもだぞ!」
繰り返すが、いくら末端の末端の建物だろうと学園内に部外者が入るのならば、最低限のツテとアポイントメントが必須だ。
この坊主頭が単独で乗り込んで学園の生徒会 との面会を取り付けられるほど交渉上手な人間とは毛ほども思えないので、十中八九、今日の訪問が実現した裏には《白蛇》の総長さんと理事の甥である王道の協力があるのだろうと推測できる。
感動の再会、とばかりに感極まる坊主頭と普段通り声と頭部の主張が激しい王道があまりにも状況にそぐわなすぎていっそ白ける。
態度を一転させた坊主頭はそのまま王道をきつく抱き締めた。
変装した状態の王道に対しても全力のラブコールを飛ばせる愛の力ってスゴイナー。
「あ、リオ! 三人で一体何の話をしてたんだ?」
数秒にも満たない感動の再会とやらを果たした後は坊主頭の身体をぺいっと自身から引き剥がし、坊主と化した頭のことすらノータッチでこちらに駆けてくる王道の塩辛対応も如何なものか。
一瞬寂しそうな顔をした坊主頭だが、それはすぐさま俺たちへの嫉妬に塗り替えられる。八つ当たりかよ。
しかしこのタイミングで遭遇フラグを踏んでしまうとは。
口実を使ったり見ないフリをしたりと、当たり障りのない関係のまま回避し続けていた王道との接触も、今回ばかりはそうもいかないらしい。
まあ、副会長なんぞ王道からすれば会長の腰巾着みたいなもの。
案の定、俺に向いていた王道の意識は、俺の背後から会長が出てきた途端に秒で切り替わった。
「奏、なあ、教えてくれよ!」
「……ああ、お前か。《白蛇》のやつらから詳しいことは聞いていないのか?」
「……? 白蛇幹部 が奏たちに会いたがってるから、約束を取り付けてほしいとは頼まれたぞ。いつの間に仲良くなったんだ?」
「理事に話は通しただろう。その時向こうは何と?」
「叔父さんからは、『友達が遊びに来るだけなんだから、反対はしないよ』って。だから、ここでずっと待ってたんだ」
遊びに。
遊びに、なあ……?
コイツがすんなりアポを取り付けられたのも、最終的には理事長の許可が降りたからだ。
自分の甥が気性激しい暴走族とつるんでいることや、その仲間 を応接室に通すことに対して、果たして理事長はどんな考えをお持ちでいらっしゃるんだか。
しかしここで、王道が会長の右腕の怪我に気付く。顔色が変わった王道を前にして、焦りを見せたのは坊主頭だった。
「奏……それよりなんで、その腕……」
「「「………」」」
「一体、誰が……?」
他校生であるお前のトモダチが学園を訪ねている時点で「誰」が原因なのか察して貰いたいものだが、1から10まで説明したところで言語が正しく通じるかも怪しい。
坊主頭の縋るような視線を頬に感じる。
言わないでくれ、ルイに知られて幻滅されたくない、といった懇願にも似た熱視線。
当然、冷めた目で見返した。
こんな時ばかり、なんて調子がいい。
それに。
「誰が、こんな酷いことを……っ!」
なあ、お前。
誰が、という時点で薄々気付いてんじゃねえのか。
この怪我が会長の不注意や事故などではなく、「誰か」によって故意に傷付けられたものだと、本当は分かっているんだろ。
白々しくしらばっくれてまで、一体何の意味がある。
一体誰のせいか。
勿論、直接的な原因は怪我を負わせた坊主頭のせい。間接的な原因は避けきれなかった俺のせい。
さらに間接的に、言えば。
この、《白蛇》の幹部をここまでさせるほど狂わせた人間の、せい。
「…────あなたのせいですよ、ルイ」
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