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「……、、え…?」  差し込む陽光が流れる雲に覆われ、白壁に影が差す。  王道、坊主頭、そして会長、三者が俺の一言によって目を見開いていた。  王道はただただ茫然自失。責任の所在が自分に向けられたことをすぐには咀嚼できていない様子だった。  坊主頭は、告げ口されなかった安堵と、その肩代わりとして王道が責められる憤り。  そして会長の眼差しからは、「何を言うつもりだ」、と問いたげな困惑と制止の意味合いが伝わる。しかし今回ばかりは引っ込んでおいていただこう。 「一昨日(いっさくじつ)、彼は私に、あなたと関わった人間全員を片付けたいと仰っていました。つまり彼をそのような思考に至らしめた根本の原因に在るのは、あなたの存在」  もちろん、すべてが王道のせいとは言わない。  坊主頭が自分勝手に動いた責任の全部を、王道一人になすりつけるのはお門違いだと分かってはいる。  でも、そもそもの元凶は。《白蛇》が暴走する原因は。  そして…───誰からの叱責なら、こいつらに一番影響力を与えられそうか、といったら。 「だから、あなたにも責任があります」  お前に"ケジメ"を付けてもらうしかないんだよ、王道。  お前からすれば責められる謂われはないと思うのだろうけど、そこはもう、身から出た錆だ。  誰彼構わず友達認定するのも結構だが、数ヶ月前の友人関係を蔑ろにしていては交友も信頼関係もクソもない。  会長の怪我を心配する暇があるなら、まずは会長が怪我を負う原因となったお前と《白蛇》の間の認識の齟齬(そご)を綺麗に解決してからにしろ。  坊主頭がいい例だ。ぶん殴られても髪を刈られても、こいつの、こいつらの本質はきっと変わらない。  王道の言葉でなければ、この腐った根性は治らない。  生徒会の連中はこの喧嘩を正々堂々受けて立ったことで、《白蛇》との関係に"ケジメ"を付けた。  ここから先は、王道と《白蛇》だけの問題。  個人的には元の鞘に戻って、お仲間と仲良くしててほしい。 「一昨日? オレと関わった人間? 何……どう、いうことだ、オレは、」 「る、ルイは悪くないんだっ、俺が──…」  まあ当然、坊主頭は王道を必死になって庇うだろう。ほんの先ほどまでは王道に自分の暴挙を知られたくなさそうだったのに、なんと扱いやすいこと。  王道の様子からして、こいつは当事者でありながら何も知らされていなかったようだ。こいつの周囲も如何なものかと。  一歩足を引いて、始まった茶番を静観する。  《白蛇》と《黎》の喧嘩の発端から一昨日までの一連の顛末を王道に説明し出した坊主頭の声をBGMに、帰っていいかなあ、という思考がふわりと浮かんだところで、耳元で囁かれる声。 「お前………馬鹿か」 「馬鹿で結構です」 「あの《白蛇》の幹部。お前のこと、恨むぞ」  そうかもな。  けれどこれは《黎》の元幹部の《コウ》としてというよりは、学園の副会長である俺としての率直な意見だ。  チーム同士の怨恨を招きかねない会長たちではなく、すでにチームを抜けた俺の立場だからこそ、真っ正面から糾弾することができる。  例えそれが悪役だろうと何だろうと、最後まで演じきってやる。  そう意気込んだ矢先、会長の手元が視界に入り───目を、疑った。  

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