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 この人……録音、してる?  ………。  ……………。  ついには王道の声を携帯に保存するほど末期になってしまったのかと思って距離を置きかけたが、無機物からの情報でヌく趣向はなかったと……思う。  さすがにそこまでアイタタタでもないと……思い、……たい…。  会長が持つ携帯に表示されるボイスレコーダーアプリ。ちょうど俺から見える角度で忍ばされたそれだが、一見すると単に携帯を弄っているだけのように見えるので、現在進行形で録られている二人はこの異様な状況に気づいていない。  会長の横顔は機械的で、坊主頭の決死の弁明シーンとの落差が凄まじかった。両方を交互に見比べ、その温度差に困り果てる。 「そう、か……そうだ。リオの言う通りだ。素手のやつ相手に武器で攻撃なんて、卑怯者がすることだ。オレが、これまできっちり注意してやらなかったから……!」  思考が横道に逸れている間に坊主頭は先日の説明を終えたらしい。  ただし王道、どのあたりが俺の言う通りなんだ。お前は果たして俺の話をちゃんと聞いていたのか。  「あなたのせい」ってのは攻撃手段を矯正してこなかったことを言ってんじゃねえんだよ。お前が自分に惚れた男をよそ様に迷惑かけるほど野放しにしてきたことが問題だっつんてんだ。  せめて勝手に消えたりしないで、学園に行くことを事前に《白蛇》の連中に告げて了解を取ってさえいれば、誘拐だの幽閉だのバカな誤解は生まれなかったのに。  ちゃっかり論点をすり替えてんじゃねえぞこのくそマリモ。 「このオレが説教してやる!」  うぅーん……この着地点は想定してなかったな……。  まあ、この正義感の強さもある意味、王道属性の特徴とも言えるだろう。正義は正義でも、方向性が間違っていればそれはただの偽善でしかないが。  どちらにせよ王道からの説教を坊主頭へ施すというならもう結果オーライ。  何より早く解放してほしいです。  週の頭から面倒な呼び出しを食らって面会謝絶しないだけ有難いと思ってほしい。貴重な放課後の時間をこれ以上潰さないで下さい。 「教えてくれてありがとな、リオ!」  にっこり、本当に感謝している、とばかりに笑う。  王道への片思い設定が嘘だとバレる覚悟で、わりと本気で突き放したつもりだったのに、まるでそれがなかったかのような振る舞い。  鈍感、過ぎるにも程がある。  そして、相変わらずの溌剌とした声、大きく笑う口許は、明るい口調のままこう言ってのけた。 「あ、そうだ! 二人とも、オレに何かできることがあれば言えよ。こいつのお詫びに、頼みがあれば何でも聞くぞ? 何でも、言ってくれよ」  ああ……、………まただ。  妙な、違和感。  どこか引っかかる。口調も発言も見えている口許も、いつも通りなのに何かが違う。  しいてあげるとすれば、いつもどおりだと断言できないその目元。王道の常に隠されている一部。 「オレに何を、して欲しい?」  おそらくこいつは今───…、目が笑っていない。  

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