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ぐるぐるぐるぐる考えを巡らす俺を余所に、ヴーっ、ヴーっ、と低い振動。会長が持つ携帯からだ。
……そうだ、あのボイスレコーダー。そこからの切り口で問いただせば、さすがに言い逃れはしないんじゃなかろうか。これまでの会長の言動に説明をつける、何らかの手がかりになれば。
「電話だ。……お前、どうする? 先に校舎に戻るか?」
「………いえ、待ちます」
どのみち俺は会長の介護、ンンッ、護衛・付き添い役としてここまで(ひっついて)来たので、返事はひとつしかない。
さすがに横に突っ立っておくのも立ち聞きするようでどうかと思い、そろりと距離を置こうとしたら、何故か会長から腕を一度掴まれ、「ここにいろ」と示される。
え、何故。
ならばせめてもの抵抗にと、反対側に顔を背けたと同時、通話ボタンがタップされる。電波の向こうから、誰かのくぐもった声。
「さっき送った音声、聴いたか?」
さっそくボイスレコーダーの話題が投下され、聞き耳立てまいとする決心があっさり折れる。
そもそも会長に隠す気がない。
むしろ俺をこの場に留まらせた時点で、聞かせるがためと言わんばかりな。
『聞い──、────だね?』
「うるせえな。なんでこの俺が盗聴なんざ趣味の悪ィことしなきゃなんねえんだ」
『で、──よ、────は』
「……まあ、俺が見てきた限り、当初の想定ほど害があるようには思えねえな。あの反応だと、《白蛇》を駒として一計を案じていたとも思いがたい」
電話相手の声はほとんど聞き取れない。
主語がない、話が読めない。
それでも、タイミングを考えると王道のコトを話題に取り上げているんだろうってことは、なんとなくわかる。
盗聴は会長が意図したものではなく。
当初は害があると考え、一計を案じている可能性を視野にいれていて。
しかしここで、害はないと判断した。
だからこそあの、"一年"呼び?
待てよ、『当初の想定』って、いったいいつからなんだ……?
「今回のことで思うところもあるようだし、どうやらただの馬鹿ではなさそうだ」
『……』
「だがこれでハッキリした。あの一年が敵意を向けている相手は、どうやら俺たち生徒会じゃねえみたいだな。……時間は喰ったが、ようやく肩の荷が降りた」
もう興味のないフリなんてできなかった。反対側に背けていた顔をまっすぐ会長に向ける。
わかるようでわからない流れ。
一体誰と話をしている。会長は一体何を知っている。
「後のことはお前に任せる。
……だが、お前から聞いたままのプロトタイプでもねえと思うぞ。その、『オウドウ主人公』ってのは」
────待て。待て待て待て。
なんて爆弾ワードをワンクッションもなくぶっこんでくるんだこのバ会長は。
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