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◇《黎》のとある下っ端くん達のウワサ話(召集の夜から約一週間後)
「……なあ。《白蛇》の噂、聞いたか?」
「壊滅状態って……、マジかよ……」
「昨晩のことだ。いつもの集会場で、一人残らず転がされてたんだと」
「あんなに数いるのに、たった一人で、たったの一晩で……?」
「俺らとの喧嘩で疲弊してたからか?」
「疲弊なんざするかよ。少しでも劣勢ならすぐに諦める腰抜け共だぜ?」
「それにしても壊滅ってやべえな……」
「降参しても問答無用だったって」
「仕方ねえよ。何せ相手が悪い」
「《白蛇》側が喧嘩をふっかけたのか?」
「あいつらにそんな度胸あるか。気紛れで潰されたんじゃね?」
「まあ、実際に会ったら怖えだろうけど、不良の端くれとしては憧れるよなあ、あの無情の強さ」
「つーかまじで、いるんだな。都市伝説だと思ってた」
「「「「────《黒フード》」」」」
「あれで《ナイトメア》でも幹部クラスなんだろ? 総長・副総長はどんだけバケモンなのよ」
「あの族に目ェ付けられちゃあ《白蛇》も解散せざるを得ないよな。俺らとしては報復の心配がなくなって一安心だけど」
「でも、余所の県を大々的に粛清なんて今までなかったのに……。俺らも気ィ付けねえと」
「………」
「? どうした新入り」
「いや……その。見間違いかもですけど」
「何? 言ってみ」
「僕、あの夜コウさんに頼まれて、救急箱をお届けに行ったんです」
「あー、そうらしいな。羨ましいなこの野郎」
「そのとき着てたパーカー……」
「コウさんの服にも……黒いフードが付いてたんです」
「「「…………」」」
「……。別物だろ?」
「黒のフードなんてありふれたものを無理矢理関連付けられてもな……」
「でもあの服、コウさんの体格にしては大き過ぎるなと思ってて……そしてこのタイミングで《黒フード》の《白蛇》襲撃……偶然にしてはちょっと、」
「考え過ぎ」
「コウさんが《ナイトメア》の幹部と裏で繋がりがあるとでも? バカ言うなよ、今は抜けたにしたって、コウさんは《黎》の元幹部で例の学園の現生徒会様だぞ。あんな野蛮な暴走族の幹部と馴れ合うはずが、」
「そういえば、学園に《ナイトメア》の幹部がいるって噂、聞いたことあるかも……」
「な」
「ん」
「だ」
「と?」
【《黎 》】……
活動自体はさほど活発ではないが、その統率力と頭脳派・武闘派を取り揃えたバランスの良さから県下では一目置かれており、夜の無償パトロールの影響で市民からも受け入れられている暴走族 。チームカラーは黒。
トップへの信頼と忠誠には並々ならぬ情熱があると有名。
総長は《闇豹》、副総長兼情報屋は現在放浪中、《クロ》と《アオ兄弟》の三名の幹部から成る。
また、総長・幹部・数名のメンバーが学園の生徒であることは、ごく一部の関係者を除けばシークレット情報である。
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